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2012年に米国マサチューセッツ州に住む母親(※1)が、13歳の息子にクリスマスプレゼントとしてiPhone(スマートフォン)を用意しました。
その際、母親はiPhoneを安全に使って欲しいという思いを込めて息子との間で「使用契約」を結び、自身のブログにも掲載しました。このことは米国のマスメディアにも取り上げられて大きな反響を呼び、日本でもNHKやTBS、日本テレビなどで取り上げられたり、名古屋大学で講演されたりして話題になりました。
教育研究テーマにとどまらず、保護者としても十分参考になりますので、ご紹介いたします。
厳しいと感じる方もいっらしゃるかもしれませんが、親として子供を信頼しているからこその内容となっています。
18条と多いですが、ぜひご一読いただければと思います。
1条. これはお母さんのiPhoneです。私が買って、あなたに貸してあげるものです。私ってやさしいでしょ。
2条. パスワードは常に私に報告してください。
3条. これは電話です。着信音が鳴ったらマナーを守って必ず出てください。もし、画面に「お父さん」か「お母さん」と表示されたら絶対に出ること。
4条. 学校のある日は午後7時30分に、休日は午後9時にお母さんかお父さんにiPhoneを必ず渡しなさい。次の朝7時30分まで電源を切っておきます。友達の親が直接出る固定電話に電話できないような相手なら、その人には電話もメールもしないこと。自分の胸に手をあて、自分達が尊重されたいと思うのと同様に他の家族も尊重しなさい。
5条. iPhoneを学校に持って行ってはいけません。メールでやり取りする相手とは直接会話を楽しみなさい。会話は生きる上で身に付けるべき大事なことです。ただし半日登校や遠足、課外授業などの際にどうするかは都度決めることとします。
6条. もしトイレに落として水没させたり、地面に落として破損したり、紛失したりした場合、交換や修理費用は自己負担です。庭の芝刈りや赤ちゃんの世話などのアルバイトや、誕生日のお小遣いでカバーしてください。また、そういったことが起きてもいいように普段から貯金しておかなければなりません。
7条. このテクノロジーを使って嘘をついたり、人を馬鹿にしたりあざむいたりしてはいけません。ネットいじめに関わるようなこともしてはいけません。人のためになることを第一に考え、喧嘩に参加しないこと。
8条. 人に面と向かって言えないことを、iPhoneで会話したりメールしてはいけません。
9条. 友達の両親の前で言えないようなことをiPhoneで会話したりメールしてはいけません。自己規制してください。
10条. ポルノは禁止です。お母さんと共有出来るような情報をネットで調べてください。もしわからないことがあるようなら、誰か人に聞くようにしなさい。なるべくお母さんかお父さんに聞いてね。
11条. 公共の場では電源を切るか、サイレントマナーモードにしなさい。特にレストラン、映画館などにいるときや他の人と会話しているときは気をつけなさい。あなたはだらしない人ではありません。iPhoneがそれを変えるようなことがあってはいけません。
12条. あなたや他人の身体の画像を送ったり受け取ったりしてはいけません。バカにしてもだめです。あなたは賢いですが、そういうことがしたくなる時期が必ずやってきます。それはとってもリスクが大きく、学校生活だけでなく人生さえも壊してしまうといった最悪の結果を招きます。サイバースペースは巨大であなたより強力です。このことはもとより、悪評を含め一度広まってしまったら、消し去ることはとっても難しいのです。
13条. 膨大な数の写真やビデオを撮らないでください。すべてを記録する必要はありません。その場その場の経験を大切にしてください。全てはあなたの記憶に残ることでしょう。
14条. 時々iPhoneを家に置いて行きなさい。それが安心・安全のために良い判断だったと思える時があるでしょう。iPhoneはあなたの人生でもあなたの延長線でもありません。iPhoneなしで生活することを覚えてください。iPhoneを失うことを怖がるような「ソーシャル依存症」になってはいけません。
15条. 同世代の多くの子達が聴いているような平凡な音楽ではなく、クラシックや前衛的な音楽をダウンロードして聴いてください。現在は昔と比べ音楽を簡単にダウンロードして聴けるようになりました。この環境を最大限に活用してあなたの視野を広げてください。
16条. 言葉ゲームや難しいパズルを解いて、脳を鍛えなさい。
17条. あなたの周りで起きることを良く見てください。窓の外を見て鳥の声を聞いて、散歩に出かけ、知らない人とも話すようにしなさい。検索に頼らないで自分自身で探し求めなさい。
18条. 問題があるようなら、iPhoneを没収します。そして一緒にそのことについて話し合い、またやり直しましょう。あなたと私。私たちはいつも何かを学ぶチームとして一緒に答えを出していきましょう。
ここに掲げたことにあなたが同意できることを望みます。またここに掲げた多くのことは単にiPhoneだけでなく人生に関わることなのです。あなたは目まぐるしく変化する世界で育っています。そのことはとてもエキサイティングで魅力的なことでもあります。あなたが得られる全てのチャンスを単純に受け止めてください。あなたの強力な知性と大きな心は、いかなる機械よりも勝ると信じなさい。あなたを愛しているわよ。この素晴らしく新しいiPhoneを満喫することを願っているわよ。メリークリスマス!
いかがでしたでしょうか?
18条の約束は窮屈に感じてしまいそうですが、「何か起こってから」では遅いことをこの母親は充分に理解したうえで、息子を守っているということが伝わってくる内容です。
また、最後の約束は「一度失敗しても話し合ってやり直しましょう」とあります。ちゃんと家族として、親子として、母親として息子を正しい方向へ導こうとする内容に深い愛情と信頼を感じます。
もし機会があればこの内容をご家族で共有し、健全なスマートフォンライフを送っていただければと思います。
(※1)ジャネル・バーリー・ホフマンさん。ネット社会における家庭教育のあり方に関する実践者であり、作家でもある
(※2)出典:http://www.janellburleyhofmann.com/postjournal/gregorys-iphone-contract/#.Vk7Ep7fhDmg
(※)「iPhone」は、米国および他の国々で登録されたApple Inc.の商標です。