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2017/07/03

埼玉西武ライオンズの「Pepper の”このモノマネだーれだ?”」開発秘話 ロボアプリ開発担当者に聞いてきました!

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(左から、アプリケーションサービス本部の西海土、畑野、府川)

2014年に世界初の感情認識機能搭載のコミュニケーションロボットとして発表されたPepper(ペッパー)。ディズニー映画の日本語吹き替え版に声優として出演したり、子供向けTV番組のMCを務めたりといったマスメディアでの活躍から、一般ユーザーに認知度の高いPepperですが、ビジネスシーンでの利用も着実に増えています。

ソフトバンク社の公式発表によれば、2017年2月時点で約2,000社の企業がPepper for Biz(※法人向けモデル)を導入しているとのこと。

これまで、イベントでのプロモーションや店舗・病院などでの接客・受付業務が活用の中心でしたが、Pepperの基本アプリがカバーする業務以外にも、独自にアプリを開発・実装することで、ビジネスユースの可能性は広がります。

一例としては、2017年4月、埼玉西武ライオンズがファンサービスの一環として、ライオンズストアにて19日(水)、21日(金)~23日(日)の4試合日限定でPepperがどの選手のモノマネをしているかを当てるクイズイベントを開催し、700名を超えるファンを楽しませました。

今回は、このアプリ開発を担当したアプリケーションサービス本部の西海土、府川、畑野の3名の技術者に、苦労した点や印象的なエピソードなど開発秘話を聞きました。

人間の表情を読み、声のトーンさえ分析して自律的に会話をしてくれるというPepperの強みをいかし、さらなる可能性を引き出すロボアプリ開発の舞台裏に迫ります。

アイデアソンから生まれた「選手のモノマネをするPepper」

当社は、50年以上にわたり、自治体や金融機関をはじめとする法人向け業務システムなどを手がけてきましたが、ロボアプリに関しては、ソフトバンク社が提供する「Pepper パートナープログラム」ロボアプリパートナーBasic の認定を2015年に取得以降、10以上の法人へPepperやその先輩機にあたるNAOのアプリ開発と導入・運用実績を重ねてきました。

一方、埼玉西武ライオンズ様では、2016年のシーズンから来場者満足向上のためにPepperを導入し、当日の試合の見どころなどを発信してきました。

西武グループの持株会社である西武ホールディングスは、各グループ企業に対し、業務への企画力向上を求めており、その流れで、ICT(Information Communication Technology)に即した人材を育成する目的で、新技術を取り上げたアイデアソンに取り組んできたといいます。

府川

Q. 新技術という枠組みのなかには、ロボット以外にどんなものがあったのでしょうか?

府川:たとえば、ドローンやVRなどがあったと聞いています。そういったいくつかの候補ごとに担当のベンダー企業が入ってアイデアソンを行ったなかから、「ロボット×アイネス」の組み合わせが選ばれました。

Q. ほかの新技術やベンダーを抑えて、アイネスが選ばれた理由はどんな点にあるのでしょうか?

府川:レスポンスの速さと、西武ホールディングス様のニーズに対し適切な提案を行ったことが決め手となったようです。

Q. Pepperに選手のモノマネをさせるという案はアイデアソンから生まれたそうですね。

府川:はい。複数の新技術からロボットが選ばれた後、改めて、西武ホールディングス様と西武ライオンズ様、当社の3社でアイデアソンを行いました。
期間は1日、3社から総勢10名ほどの参加メンバーをシャッフルして2チームに分かれ、「もっとも楽しかった思い出・もっともつらかった思い出」を起点としてスタートしました。

Q. どういった経緯からアプリのアイデアが出てきたのか、もう少し詳しく教えてください。

西海土:発案チームにいた私からご説明します。まず、「つらい体験」ということで「ファミレスでの待ち時間のつらさ」がクローズアップされ、「待ち時間をつらいものから楽しい時間へ転換させるためにPepperを活用する」という方針が立ちました。

そこで、西武ライオンズ様の球場で発生する待ち時間として、「観戦チケット購入時の待ち時間」「球場へ入場する際のエントランスでの待ち時間」などが挙がったのですが、Pepperはメンテナンス上、屋外での使用には向きません。屋内での待ち時間に限定し、ライオンズストアの待ち行列をターゲットとしました。

西海土

さらにアイデアを出していくなかで「選手のモノマネをクイズにして答えてもらう」という案が出てきました。これは、これまでのPepper活用法として多く見られた「1対1での対応」ではなく「1対多数」であること、プレゼンのような一方向性の活動ではなくインタラクティブな使い方であるという2つの新規性から採用が決まりました。

府川:ちなみに、私がいた方のチームでは「自分が接客を受けたいキャラを選んでサービスを受けられる店員Pepper」を企画しました。採用には至りませんでしたが、「丁寧な接客をしてくれるPepper」や「オネエキャラのPepper」などが選べる想定でした。

Q. 遊び心がありますね!そちらも面白そうです。

【企画・要件定義~設計】少ないモーションで最大限に楽しんでもらう工夫

府川・畑野・Pepper

Q. アイデアソンで「選手のモノマネをするPepper」を作ることが決まった後は、どのようにして開発まで進められたのでしょうか?

府川: アイデアソンの後、西武ライオンズ様の方からモノマネをさせたい5選手のご要望をいただいたので、企画・要件定義の作成と並行して5選手分のモックアップづくりに取り組みました。

Q. 企画・要件定義のポイントとなったのはどんな点でしょうか?

府川: アイデアソンでの採用理由になった「1対多数」「インタラクティブ」をどう実現するかという課題に向き合いながらの作業となりました。

開発工数の関係上、多くのモーションは作成できませんが、西武ライオンズ様から「ライオンズファンがフフッと笑ってくれるような面白いコンテンツにしたい」というご要望をいただいたので、1つのモーションに対して複数の選手を回答にしたひっかけ問題を用意するなどの工夫を行いました。

最終的に、Pepperが5選手(全5モーション)からランダムに1つを選んでデモンストレーションして見せたあと、胸のタブレットに選択肢として3選手が表示され、参加者は当専用のQRコードからスマホの回答画面にアクセスして回答を入力するという流れに決まりました。

Q. ひっかけ問題というのは、たとえば、どんなものですか?

府川: 牧田和久投手のサブマリン投法と見せかけて、浅村 栄斗選手の「セカンドからのファーストへの送球」といった具合です(笑)。

Pepperは足が可動しないほか可動範囲がかなり限られているので、当初からモノマネ芸人レベルのハイクオリティなモノマネをさせるつもりはありませんでした。モノマネを見たファンから「こんなの、わかるわけないだろ!」という笑い交じりの突っ込み待ちというスタンスと、Pepperの愛嬌に免じて似ていなくても許されるという読みから先ほどの西武ライオンズ様のご要望を満たしたかたちです。

【開発・テスト】モーションは選手の動画を繰り返しチェックしてできるだけ忠実に再現

Q.モーション作りで特に工夫された点はどこですか?

府川:選手の特徴を掴むため、ご担当者様から提供いただいた5選手の動きの特徴が特によく表れた動画を繰り返し何度も見返してモーションを作りました。

Q. Pepperが金子 侑司選手の盗塁のモノマネをする様子を動画で拝見しましたが、途中で一度ちらっと横を向くディティールがより一層Pepperの愛嬌を引き出しているように思います。

府川:資料の動画に忠実に作ってあるんですよ。その動きもそうですね。
作り終えたモーションは、他部署のスタッフにも見てもらい、さまざまな意見をもらってフィードバックしました。

Q. 回答画面の開発では、新しい技術を導入されたそうですね。

畑野:Microsoft社のASP.NET MVCのRazorというビューエンジンです。サーバー側でデータベースとのデータ連携や画面まわりのコーディングを効率化できるツールなのですが、開発末期にはかなり使いこなすことができるようになり、新技術の習得につながりました。

【リリース~運用】

Q. 実際にライオンズファンの前でモノマネを披露したのはわずか4日間ということですが、700名を超えるファンがクイズに参加されたそうですね。

府川:回答画面への入力は51件ですが、目視で確認できた参加者は736件でした。TwitterやInstagramでの反響もあり、多くのファンの方に楽しんでいただけたようです。

Pepperのモーションについては、西武ライオンズ様にも、選手の特徴をよく捉えているとおほめの言葉をいただくことができました。

畑野

Q. 「似ていないのに、ファンはなぜか正解してしまう」という噂も耳にしたのですが…?

畑野:そうですね(笑)。クイズに参加してくれた方に現場でヒアリングしたところ「似ていないけど、なんとなくわかる」ようです。「選択肢から消去法で答えると当たる」という声もありました。

続けて同じモーションが現れてしまうと、どうしてもクイズが単調になってしまうので、設計の際は、モーションが連続しないように配慮したのと、選択肢に表示される選手も70名ほど登録して、表示される選手がダブらないようにしました。

Q. 当日は、アイネスのスタッフも同行したのですか?

府川:はい。当プロジェクトの当社作業範囲として、本番稼働中の立ち合いを計画していたため、 同行してPepperのメンテナンスに当たりました。

Q. メンテナンスとは、具体的にどんなことをされたのですか?

府川:Pepperは、長時間連続稼働させるとモーターに負荷がかかるので、強制的に休ませ、再起動してやる必要が出てきます。

ソフトバンク社が公式に出しているPepperの連続稼働時間は10~12時間なのですが、実際はもう少し短い時間でもモーターに負荷がかかり、しゃべらなくなったり動かなくなったりしてしまうことがあるんです。

今回のモノマネでは1日4時間の稼働で4日間、うち3日間は連日の稼働となったのですが、右腕を酷使したためか最終日は再起動が必要になりました。

Q. まるで、本物のプロ野球選手が故障するようですね。

府川:ロボットなので、疲労が蓄積することはないはずなのですが、モーションで腕や肩に負担がかかったためだと考えられます。

畑野:以前、別のイベントで、今回のようなモーションはなく話すだけで使用した際も、6時間を超えたあたりでPepperの口から「今は話をしたい気分ではありません」という言葉が出たことがあったので、実運用では4~5時間を目安に使った方が良いかもしれません。

知識ゼロ設備なしから共同開発の相談にも応じられる

西海土・府川・畑野

Q. 要件定義から納入までトータルでかかった期間はどのくらいですか?

府川:約1ヶ月ですね。これは、難易度からすると少々タイトですが、これまでのほかの開発も、予算やさまざまな制約からだいたいこのくらいの期間になっています。

Q. 4日間限定のファンサービスということで、現在はPepperのモノマネもクイズ回答画面も見ることができませんが、今後、サービスを再開する予定などはありますか?

府川:残念ながら、ありません。もし、またサービスを提供する機会があれば、出題から回答までのシンキングタイムをもっと縮めてテンポよくするなど、改善したい点はいくつかありますね。

Q. アイネスでは、PepperのほかにNAOのアプリ開発も行っていますが、どちらに比重を置いていますか?

府川:特にどちらということはないですね。お客様によってはメジャーになりすぎているPepperを敬遠してNAOを選ぶ方もいらっしゃいます。

当社でそれぞれの特性を把握しているので、屋外でのプロモーションならNAOをおすすめするなど、お客様の用途に合わせてご提案させていただきます。

Q. Pepperを所有していなくても、ビジネスへの利用を相談することはできますか?

府川:はい。Pepper本体の販売・貸出を含めた企画・ご提案が可能です。

Q. 開発を委託するのではなく、共同開発したいといった場合は何か条件があるのでしょうか?

府川:いえ、ロボットへの興味があれば特に条件はありません。ロボットに関する知識やプログラミングなどのスキルもなくて大丈夫ですし、開発のためのハードウェア類や設備をご用意いただく必要もありません。

Q. 思ったよりもハードルが低いので驚きました!

府川:そうですね。費用に関しても、難易度にもよりますが、基本的にはご予算のなかでできることをご提案させていただきますし、ビジネスにロボットを活用したいというご希望さえあれば、ご相談に応じます。

Q.ロボアプリ開発でこれまでに受けた相談には、どのようなものがありますか?

畑野:Pepperに社歌を歌わせたいという相談を受けてモックアップを作ったことがありますが、採用には至りませんでしたね。ロボットに歌わせるのは難易度が高く、私もこれまでにPepperが歌っているところは見たことがありません。人間が歌ったPepperに似せた音声をPepperで再生していた例はありましたが。

Pepper

Q. Pepperは多言語対応しているんですよね?

府川:日中英の三ヵ国語ですね。アプリ開発でフランス語など他言語に対応させることは可能です。ちなみにNAOはデフォルトで19カ国語に対応しています。

Q. 最後に、ロボアプリ開発の醍醐味と今後の展望を教えてください。

畑野:実際に使われているところが見えない業務系のシステムとは違い、自分の作ったアプリが人を楽しませている様子を目で見て確認できるところがやりがいになっています。

府川:そうですね。開発している時点でも満足できて、さらに人に見せて評価してもらえると達成感があります。

今後は、これまでのようなPepperに何かをさせて人に見せて楽しませることが多かったのですが、ロボットでなくてもできる範疇の業務でした。そこから、ロボットならではの用途開発ができればと思います。人がいやがる作業も含め「ロボットにしかできないこと」を追求していきたいですね。

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※Pepperは、ソフトバンクロボティクス株式会社提供の人型ロボットです。
※ロボアプリは、ソフトバンクロボティクス株式会社の登録商標です。
※本文に掲載されている会社名・製品名は各社の商標または登録商標です。

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