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2018/04/02

「働き方改革」を成功させるために。先進企業の取り組み事例と、ICTの活用方法をご紹介!

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「働き方改革」とは、政府が「一億総活躍社会」の実現を目指して推進している取り組みのことです。その背景にあるが、労働力人口の減少や社会問題にもなっている長時間労働、低い労働生産性(主要先進7か国の中で最下位)、少子高齢社会の進行などです。安倍晋三首相は、2016年9月に私的諮問機関として「働き方改革実現会議」を設置しました。


今回は、「働き方改革」が必要となった経緯のご紹介から、実際に企業が取り組んでいる事例を中心に、「働き方改革」を成功させるためのヒントを探っていきましょう。



なぜ「働き方改革」が必要なのか?日本が抱える雇用の課題とは

冒頭で、政府が働き方改革実現会議を設置した背景には労働力人口の減少があるとお伝えしましたが、現在、総人口の減少を上回るペースで生産年齢人口(15~64歳)の減少が起きており、このままでは国全体の生産性が低下し、ひいては国力自体が低下してしまうことが懸念されています。


そこで、「一億総活躍社会」=

「若者も高齢者も、女性も男性も、障害や難病のある方々も、一度失敗を経験した人も、みんなが包摂され活躍できる社会」

「一人ひとりが、個性と多様性を尊重され、家庭で、地域で、職場で、それぞれの希望がかない、それぞれの能力を発揮でき、それぞれが生きがいを感じることができる社会」
「強い経済の実現に向けた取組を通じて得られる成長の果実によって、子育て支援や社会保障の基盤を強化し、それが更に経済を強くするという『成長と分配の好循環』を生み出していく新たな経済社会システム」

を実現するために、出生率を上げ、働き手を増やし、労働生産性を上げるための取り組みを「働き方改革」として推進していこうというのです。


以下で、日本人の働き方に起因する労働力低下について確認していきましょう。



【課題1】女性の労働環境が向上せず、出生率が上がらない

政府は、経済成長のためには人口1億人が必要だとしています。ところが、近年の出生率(合計特殊出生率)は、過去最低だった2005年の1.25から2013年に1.43、2016年に1.46と上昇しているものの、この1.46をキープしたとしても2065年の日本の総人口は8808万人と予測されており、1億人を下回ってしまうのです。


そこで、2025年に出生率1.8を達成するという目標を掲げました。これが達成されれば、2065年にぎりぎり人口1億人を維持できる見通しです。待機児童解消プランを打ち出すなど少子化対策を進めていますが、それと並行して個々の職場での労働環境改善や産休・育休制度の充実、短縮時間勤務制度などといった待遇が向上しなければ、職場復帰を前提とした結婚・妊娠に希望が持てず、「子どもを持たずに働くか、退職するか」の2択となってしまうでしょう。



【課題2】出産や育児、介護、老齢などによる離職で働き手が減る

前述のように、妊婦として働き、産後は職場へ復帰することを希望する女性が増えなければ、妊娠をきっかけに離職してしまうケースが後を絶たないことが予想されます。同様の問題は介護離職にもあてはまります。親の介護の必要性が出てくる40~50代のベテラン社員が休職・退職してしまうことは組織にとって大きな損失です。


また、親の介護の必要がない人でも、定年を迎える前に老齢による体力・気力の減退から退職を考えるケースがあります。こういった社員の受け皿として、時短勤務や在宅勤務などを整備できれば、離職を防ぎ労働力を減らさずに済みます。



【課題3】非正規社員と正社員の賃金格差

契約社員や派遣社員、パート・アルバイトなどの非正規社員の賃金は正社員の66.7%だというデータがあります(平成29年度・大企業の場合)※。正社員にならない、またはなれない理由はさまざまありますが、経験やスキルを持った非正規社員が報酬面で正当に評価されない環境では生産性向上は望めません。

※平成29年賃金構造基本統計調査 結果の概況(雇用形態別)


こういった賃金格差が解消されることにより、労働者はライフステージに応じて雇用形態を選べるようになります。誰もが「生涯現役で働く」ことができるようになれば、その分、労働力を確保できることになります。



企業の「働き方改革」事例から得られる成功のヒント

「働き方改革」をいち早く実現すべく、早期に取り組みをスタートした企業があります。具体的な施策やその結果から、組織として「働き方改革」を成功させるためのヒントを探ってみましょう。



育児・介護中の社員のバックアップ

育児や介護などを理由とした離職を防ぐための取り組みを行う企業の事例です。



【事例1】男性の育児休暇100%取得
ピジョン株式会社(社員数3,739人/グループ計(2017年1月現在))

哺乳瓶などの育児用品のメーカーとして知られるピジョンでは、育児中の社員を支える先進的な取り組みが行われています。従業員が経済的な心配をせずに育児休業を取得できるように生まれた制度が「ひとつきいっしょ」。これは、有給で1ヵ月間の育児休業を取得できるもので、男性社員の取得率は100%。男性従業員の配偶者が妊娠したことがわかると、取得時期を見据えて業務の分散や引き継ぎが行われるといいます。


そういった土壌づくりに一役買っているのが、子どもが生まれた従業員を対象に課せられる「育児レポート」でしょう。これは、子を持つ従業員とその上司の意識の向上を目的として導入された制度で、子どもが生まれると、業務の一環として、わが子の成長や自身の育児活動をレポートとして提出するというもの。


妊娠・出産・育児を迎える従業員とその配偶者の上司に関してはさらなる意識向上のための制度があり、産休取得や職場復帰を控えた従業員の上司は、本人と一緒に育児について話し合うための面談が行われます。「マタハラ(マタニティハラスメント)」が問題になる昨今ですが、これだけ意識改革するチャンスがあれば、マタハラ問題は起こりそうにありません。



【事例2】離職した社員の再雇用を促進
オタフクソース株式会社(社員数497人/パート社員等含む(2017年8月現在))

オタフクソースでは、妊娠・出産・育児・介護・配偶者の転勤などの理由で離職した正社員を再度、正社員として採用する制度を導入しています。3年以上勤務経験があり過去の勤務成績が標準以上という条件に合致し、育児の場合は子どもの小学校入学まで、介護の場合は離職してから6年以内、配偶者の転勤の場合は離職から3年以内であれば再度正社員として復職できる制度です。


他社の例では、自己都合による退職者であっても正社員として再雇用する制度もあり、再雇用条件の緩和に今後の期待が集まりそうです。オタフクソースでは、ほかにも希望すれば100%入所できる保育所を事業所内に開設したり、一般職を廃止したりするなど、働き方改革へのさまざまな取り組みが行われています。



長時間労働の抑制

残業の抑制など、社員の労働時間を減らすための取り組みを行う企業の事例です。



【事例3】フレックスタイム制のコアタイムを廃止
花王株式会社(社員数3万3,560人/連結ベース(2017年12月現在))

フレックスタイム制は1987年の労働基準法改正により日本に導入され、採用する企業も多くありました。正午を中心とする数時間のコアタイムが設けられているケースがほとんどでしたが、花王では2015年7月から、コアタイムを廃止し、午前7時~午後8時までをフレキシブルタイムとしました。


働き方の多様性に合わせ、メリハリのある働き方ができるようにした改善例といえ、間接的に長時間労働の抑制にも貢献しそうです。


花王では、ほかに時間単位で取得できる有給休暇や、介護と仕事の両立支援なども設けています。



【事例4】業務が終われば定時の30分前に退社できる
さくらインターネット株式会社(社員数495人(2017年3月現在))

さくらインターネットの勤務時間は9:30~18:30ですが、「ショート30」という制度により、当日の業務が定時前に終わっていれば30分前の18:00に退社することができます。ショート30は、フレックスとの併用もでき、コアタイムである12:00~16:00を含む8時間(+休憩1時間)を、最も早い労働時間帯(7時00分~16時00分)にスライドすれば、最短で15:30に退社できることになります。



休暇取得の促進

休暇は、仕事から離れてリフレッシュするためにあるものですが、働く人・働き方の多様化をふまえると、休暇の使い方を企業側が決めるべきではなく、育児・介護・通院、自己研さんや副業など、個々に委ねるべきなのではないか?と考えさせさられます。



【事例5】時効を迎える有給休暇をためておける「ストック休暇」を創設
エフコープ生活協同組合(社員数2,778人(2017年3月現在))

福岡県にあるエフコープ生活協同組合では、社員が付与された有給休暇を「病気」などのいざというときのために備えてとっておく傾向があることに着目し、本来であれば2年ごとに消滅してしまう余りの有給休暇を最大40日間までストックしておける制度を創設しました。


ストック休暇は病気の治療や自己研さん、ボランティア活動などに利用できる特別休暇として扱われます。



【事例6】週休3日制度
株式会社ファーストリテイリング(社員数4万4,424人/連結ベース(2017年8月現在))

ユニクロやGUを展開するファーストリテイリングで週休3日制度を導入したのは2015年10月。働き方の多様性に対応するためとして導入されました。ただし、3日間の休みは平日のみで、土日+平日2日間は1日10時間の勤務が求められるなど、そう甘い条件ではありませんが、もともと1日8時間勤務の社員が2時間の残業をすれば10時間勤務になることを考えると、同様の制度を導入できる企業も多いのではないでしょうか。一方、給与の面では、8時間/日×5日のフルタイム勤務と同額が支給されます。


実際にこの制度を利用している人の声として、介護や育児との両立や習い事に当てることで生活が充実しているといったものがあり、働き方の多様性に応えられているといえそうです。



「働き方改革」に活用できるICTツールが増加中

企業が「働き方改革」の取り組みを実施する際に、ICTツールの導入が奏功するケースがあります。もちろん、ツールを使わなければ「働き方改革」に取り組めないということはありませんが、「働き方改革」を実施するうえで有効なツールを目的別にご紹介します。


長時間労働を抑制するためのツール

「納期前にどうしても残業になってしまう」といったような必要性の高い残業がある一方で、「定時を過ぎたが、周りのみんなが仕事をしているので帰りづらい」「明日に回せる仕事だけだが、なんとなく残業してしまう」といった、いわばムダな残業も存在します。


残業をする正当な理由がある社員にのみ申請による残業を許可し、それ以外は退社させるために、累積残業時間によってアラートを出したり、退勤の打刻と連動してPCの電源を切る機能のついた勤怠管理システムや、定時になると自動的に消灯もしくは明るさが抑制される照明システムなどを採用したりするケースがあります。ほかに、就業時間外のPCの使用を抑止するために指定時間になると自動的にシャットダウンするシステムなどもあります。



オフィスにいなくても仕事ができる環境を整えるためのツール

出張・外出先からオフィスへ戻らなくてもファイルの閲覧や編集がセキュアに行えたり会議に参加できたりするようになれば、移動時間を削減しながら、業務の停滞を防ぐことができます。また、育児や介護で短時間しか働けないスタッフが在宅で勤務できるようになると離職を防げるというメリットにもつながります。


このような「オフィス以外の場所で働ける環境を整える」ためのツールとして、組織内部でスケジュールやタスクを共有したり、テレビ会議やSNSによるコミュニケーションをとれるグループウェア、業務に必要なノウハウや暗黙知を共有し、形式知化するためのナレッジ共有ツールなどを活用したりする方法があります。



自社に合ったスタイルで「働き方改革」への取り組みを

日本人労働者には「残業や労働時間が長く、働き過ぎである」というイメージがありますが、OECD(経済協力開発機構)が発表した2016年度の「年間でもっとも長く働く国」(フルタイム・パートタイムを含む)によれば、6位のロシアや15位のアメリカにおよばず、22位という結果でした。これは、年間祝日数が16日と多く、週休2日制が定着したためであるといわれています。


もともと先進国のなかで祝日が最多なところへ、経済効果を狙って政府は祝日を増やしています(1995年制定・1996年施行「海の日」、2014年制定・2016年施行「山の日」)。


週休2日制については、労働基準法に規定されているわけではありませんが、1992年5月から国家公務員に完全週休2日制が実施され、同年9月から公立小中学校と高等学校の多くで毎月第2土曜日が休日になったのをきっかけに、週休2日制を導入する企業が増えたようです。


これらを見ると、直接的・間接的に政府主導で「日本人に余暇を取らせる」取り組みに成功しているといえそうです。「働き方改革」に関しても、政府は「長時間労働の改善」や「高齢者の就労促進」「非正規社員の待遇改善」に向けた施策を進めており、一定の効果が期待できそうです。


日本全体の労働力低下を危惧せずとも、生産性が上がるのであれば、「働き方改革」に取り組むメリットは大きいはずです。自社の抱える課題や制度、社風に合わせ、トップダウンで大規模なワークスタイル変革を行うのか、それとも既存の規定内で実施できる取り組みからスモールスタートで行うか、まずはそこから検討を始めてみてはいかがでしょうか。



※記載されている会社名や製品名、取り組みの名称等は、各社の商標または登録商標です。


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