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2021/08/31

DXによる防災対策の最新事例 災害に強いまちづくりをDXで実現するには

DXによる防災対策の最新事例 災害に強いまちづくりをDXで実現するには

産業界では、ブームともいえるほど「DX(Digital Transformation/デジタルトランスフォーメーション)」の機運が盛り上がっていますが、それは自治体にもいえることです。2020年には総務省が「地方自治体のデジタルトランスフォーメーション推進に係る検討会」を立ち上げ、「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」を発表して、自治体のDXを推進しています。

ITベンダー各社も自治体向けのソリューションをDXパッケージとして提供したり、大手広告代理店らが自治体向けのDX情報サイトを公開して情報提供を加速させるなど、自治体を取り巻くDX推進環境も整ってきています。

本コラムでは、自治体向けDXの中でも特に、防災や災害に強いまちづくりを実現するためのテクノロジーについて、事例とともにご紹介いたします。

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防災まちづくりに貢献する「防災DX」

地震や台風、豪雨など、近年、日本で起きる災害の規模はすさまじいものがあり、地球温暖化の影響も懸念されていますが、日本はもともと「災害大国」とよばれるほど災害の多い国でした。古くは「日本書紀」に奈良時代の「白鳳南海地震(西暦684年/マグニチュード8.2)」が記載されており、自然災害は古来より「天変地異」とよばれて恐れられてきました。

内閣府の資料※によれば、日本の国土面積は世界の0.25%であるにも関わらず、2004年~2013年に起きたマグニチュード6.0以上の地震の割合は世界の18.5%を、2014年時点での活火山の数は世界の7.1%を占めています。これは、日本が地震・火山活動が活発な環太平洋変動帯に位置するためだといいます。
※「日本の災害対策(内閣府防災担当)」

政府が推進する「防災4.0」とは?

こうした日本の地理的な事情から、国は1960年頃から防災体制の整備・強化に乗り出し、自然災害による死者・行方不明者数の減少に成功しました。
1959年に紀伊半島から東海地方に被害をもたらし、死者・行方不明者の数が5,000人を超えた伊勢湾台風を機に、「災害対策基本法」が整備され、これを「防災1.0」として、1995年には、1月17日に発生した兵庫県南部地震を機に、防災ボランティアや自主防災組織による防災活動の環境整備を行い「防災2.0」、2011年の東日本大震災を機に、地震と津波、原発事故といった複合的な災害に対応する「防災3.0」と、防災政策の転換を重ねてきました。

そして、「平成28年版 防災白書」で、以降の防災について、地域、経済界、住民、企業らがそれぞれ主体的に防災に向き合い、相互にネットワークを再構築して自律的に災害に備える社会を目指す「防災4.0」が宣言されました。2015年12月には、当時の河野太郎内閣府特命担当大臣(防災)を座長として「『防災4.0』未来構想プロジェクト」が立ち上げられています。

「防災4.0」として最新のデジタルテクノロジーの活用が明言されているわけではありませんが、地域と住民、企業らをつなぐネットワーク形成にはICTの力が必要不可欠であり、これが「防災DX」とよばれています。

防災DXの取り組み事例

防災DXの先例となっている好事例をご紹介いたします。

チャットボットによる情報提供と対話

防災科学技術研究所と情報通信研究機構、株式会社ウェザーニューズがLINE株式会社の協力を得て、2018年から防災チャットボット「SOCDA(ソクダ/対話型災害情報流通基盤)」の共同開発を行っています。

SOCDAは、被災地域にいるLINEユーザーに対して「大丈夫ですか?」といったメッセージを発信し、ユーザーからのテキスト情報(「無事です」など)と位置情報、写真データなどから被災状況を収集します。

特に、新型コロナウイルスの感染が拡大してからは、感染を恐れた高齢者の逃げ遅れや、避難所でのクラスター発生など、新たな課題が生まれています。これに対しSOCDAでは、LINE上で一人ひとりの被災状況とともに健康状態もヒアリングし、医療関係者が常駐している避難所など最適な避難情報を提供します。
また、被災者を避難完了までフォローすることで、避難所の混雑状況を把握し、混雑していない避難所の提示を実現しています。

SOCDAによって、被災者が最適な情報を得て非難できるだけでなく、自治体職員の対応工数も削減することができます。

LINEは、そもそもサービス立ち上げのきっかけが2011年の東日本大震災であり、安否確認を兼ねた「既読」機能にこだわり、機能改善のほかにも複数の企業や研究機関、自治体などと共同で「AI防災協議会」を設立するなど、防災・減災の課題解決に力を入れています。

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VRを使った災害体験

従来の避難訓練の実施には、機材や場所の準備に手間がかかる割には、内容が定型で実際の災害とはかけ離れているという課題がありました。これを最新のデジタルテクノロジーで解消するのがVRを使った災害体験です。

VRとは、Virtual Realityの頭文字を取ったもので「仮想現実」と訳され、CG(Computer Graphics)によって作り出された、現実ではない仮想の世界に入り込んだかのような感覚を得られる技術のことで、専用のゴーグルを着用して体験します。

日本電気株式会社では、消防隊員や専門家のノウハウをベースにしたVRによる防災体験システム「VR現場体感訓練システム for 防災」を提供しています。体験者の視覚・聴覚に訴えることで危機的状況を体感してもらい、防災意識を高めることが可能です。費用は月額制。

また、株式会社アイデアクラウドではVRのほか、AR(Augmented Reality/拡張現実)を活用して火災や地震、暴風雨などを疑似体験できるサービス「防災VR/AR」を提供しています。煙に巻かれたり、家具が倒れたりといった、実際の防災訓練では危険で体験できないような臨場感のある内容をVR/ARで体感できます。

AIによる災害予測と異常検知

AIを活用して災害予測に役立てるサービスも開発・提供されています。
AIとは、Artificial Intelligenceの頭文字を取ったもので、「人工知能」と訳され、従来のコンピューターが行ってきたような単純計算などではなく、人間が行うような言語の理解や推論、学習、問題解決といった創造的・知的行動を実行できる技術を指します。AIチャットボットは、AI非搭載のチャットボットでは対応できないような質問者の言葉づかいの揺れにも対応でき、会話を重ねることでより回答の精度が上がるといったメリットがあります。

たとえば、株式会社富士通では、東京大学地震研究所や東北大学災害科学国際研究所、川崎市と共同で、川崎市臨海部を対象とした津波予測や事前対策の技術検討に2017年から取り組んでいます。

東日本大震災の津波被害をきっかけに、沖合での津波観測の整備が進められていますが、日本の地形は複雑で、沿岸の地形条件によって津波リスクの大きさや津波予測の難易度に大きな差があるといいます。

そこで共同研究では、東北大学災害科学国際研究所と株式会社富士通研究所(2017年当時)が開発した津波浸水シミュレーション技術や、同研究所と株式会社富士通総研が進める津波避難シミュレーション技術を活用して、川崎市臨海部におけるリアルタイム浸水解析など4つの項目について検討を進めています。

また、2020年8月には、共同研究の一環として、新型コロナウイルス禍での自然災害を想定し、「避難者の中に新型コロナウイルス感染者がいる」と仮定した上で人の流れの違いによって異なる感染リスクを確認する避難所運営の実証実験を実施しました。

メッシュWi-Fiによるネットワーク構築

大きな災害が起きると、大きな基地局が被害を受けてネットワークに障害が起き、インターネットが使えなくなります。復旧には72時間かかると想定されていますが、この「72時間」は、災害の発生によって救出・救助が必要になった人の生存率が急激に落ちる目安ともなっており、災害発生から72時間のネットワークをどう担保するかが大きな課題でした。

これを解消するために着目されているのが、メッシュWi-Fiによるネットワーク構築です。
一般家庭や企業、教育機関、公共施設などで利用されているアクセスポイントをつないで、キャリアが提供しているのとは別に第三のネットワークを形成することで、被災地周辺の警察・消防・自衛隊や被災者、ボランティアを結び、救助活動などに必要な連絡のために活用します。

具体的には、株式会社カンストが企画・開発を行う「バッテリーコネクト」が大阪府などで実証実験を行った上で販売を開始しました。

「バッテリーコネクト」で非常時も安心のネットワークを

「バッテリーコネクト」は、災害時のネットワーク障害にも影響を受けずに、独自のネットワークを形成できることから、非常時の備えとして防災DXの一つに導入できる製品としてご紹介しましたが、平常時もさまざまに活用できます。

たとえば、農地に設置して栽培データを収集し、収穫物の質・量向上に役立てたり、遠隔での機械操作を行うことでスマート農業を実現できますし、商業施設に設置して顧客の行動履歴・行動動線データをマーケティングに活かすことも可能です。

また、「バッテリーコネクト」にはバッテリーとしての役割もあるため、非常時に停電があっても、接続すれば充電を行えます。

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まとめ

古来より自然災害の多い日本は、地震・火山活動が活発な環太平洋変動帯に位置しているという地理的な特徴を抱えており、今後も地球温暖化による気候変動の影響で災害が激化する懸念が指摘されています。

過去の「防災1.0」から「防災3.0」までにも「共助」がテーマとなった期間がありますが、「防災4.0」では経済界や企業に言及されており、政府や自治体だけが主導する防災から相互に協業することが求められています。

アイネスは、災害による被害を最小限に抑えるためのICTをはじめとする最新のデジタルテクノロジーの活用や、データ駆動型ビジネスを標榜する企業を支援し、災害対策を念頭においたレジリエントな安全で安心なまちづくりを目指す自治体さまと連携していきます。

※ 本文に掲載されている会社名・団体名および製品名は各社または団体等の商標または登録商標です。

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