地震や台風、豪雨など、近年、日本で起きる災害の規模はすさまじく、被害も大きなものとなっています。災害で被害が甚大なのは、家屋や道路といった建造物のほか、電気・ガス・水道、交通機関といったライフラインに加え、最近ではインターネットを提供する基地局もあげられます。
一度、大きな災害が起きると、ネットワークに障害が起き、復旧までに72時間がかかるといわれています。そもそも、停電になってしまえば、スマートフォンなどのモバイル機器を充電することもままなりません。
今回は、そんな非常時に役立つだけでなく、平常時のビジネス課題・社会課題の解決にもつながる「バッテリーコネクト」をご紹介いたします。
「バッテリーコネクト」とは、株式会社カンストが企画・開発を行うモバイルバッテリー兼メッシュWi-Fiルーターです。
もともとは、災害時のネットワークインフラの維持を目的として企画されたものです。
災害が起こり、大きな基地局が被害を受けてネットワークに障害が起きた場合、復旧に72時間を要することが想定されています。72時間という期間はまた、災害の発生によって救出・救助が必要になった人の生存率が急激に落ちる目安ともなっており、災害発生から72時間のネットワークをどう担保するかが社会的な課題となっていました。
また、災害時の停電によりスマートフォンの充電が行えなくなると、安否確認や災害情報・避難情報の収集に支障をきたします。
そこで、スマートフォンの充電器とメッシュWi-Fiルーターを兼ねた「バッテリーコネクト」が開発されました。
「バッテリーコネクト」の用途は災害時に限らず、商業施設におけるマーケティングや販促、農業における栽培データの集約・共有による生産品質維持や協働コミュニティの形成など、さまざまな活用が期待できます。
2019年1月には、特許を取得しています(特許番号:特許第6467399号)。
メッシュWi-Fiとは、エリア内でWi-Fiがつながらない死角をなくし、どこでも途切れない接続を提供できるよう、メインのルーターのほかに複数のサテライトルーターを3~4台程度(一般家庭の場合の目安台数)配し、網の目のようにネットワークを張り巡らせることです。
メッシュWi-Fiにより、エリア内のどこにいてもローミング※が途切れない「シームレスローミング」が可能になります。
また、最適な経路を自動で選択してくれるため、たとえば、あるサテライトルーターがダウンしてしまっても自動的に経路を変更し、接続を維持します。
※ローミング…無線LANなどのインターネット接続サービスを移動しながら使用する際に、複数のアクセスポイントを切り替えること。
メッシュWi-Fiが登場する以前から、中継機を設置してルーター親機のWi-Fiを中継する仕組みがありました。しかし、この方法では、自動で最適な接続先(ルーター)を選択してくれるわけではない点が課題となっていました。
中継機を使って親機(ルーター)の電波を中継する場合、親機からの電波を受信する場合と中継機からの電波を受信する場合とで、端末側の切り替えが必要になるため、たとえば、モバイル端末を移動しながら使っていて、親機よりも中継機の方が近く、電波が強い状態になったとしても、親機との接続が切れるまでは親機の弱い電波に接続したままという状態になります。
メッシュWi-Fiでは、接続先を自動で切り替えるため、安定して快適な通信が行えます。
ただ、メッシュWi-Fiにも、ルーターを単体で使う際に比べると、サテライトルーターの数だけ電源が必要だったり、3台以上のサテライトルーターをつなぐと通信速度が格段に落ちたりするというデメリットがあります。
「バッテリーコネクト」は、次のような特長を備えています。
前述のように、通常のメッシュWi-Fiではサテライトルーターを3台以上つないだ通信では、速度が急激に落ちますが、バッテリーコネクトは、この課題を独自技術で解決。10台以上ホップしても極端に速度低下が発生しないネットワークを実現しました。
また、バッテリーコネクトには設置タイプと移動タイプの2タイプがあるため、これらがつながり合うことで、変幻自在の新しいネットワークを生み出すことができます。
通常の無線LAN工事では、ネットワークをCat 6に変更するための工事が、無線LANルーターの台数分、必要でした。
その点、バッテリーコネクトの場合、配線工事は1台分のみで済むため、ネットワーク構築までの時間や費用を大幅に短縮できます。
バッテリーコネクト同士が自動認証してネットワークを構築します。
このため、大きな災害が起こってネットワークが破壊された際も、自動的に独持のネットワークを構築できます。
これにより、通信キャリアのネットワークが復旧するまでの間に、たとえば、避難場所で被災者やボランティア、警察、消防、自衛隊などとのネットワークを形成して救助活動などを続行できるようになります。
以上のような特長から、「バッテリーコネクト」は次のようなシーンでの活用が想定できます。
災害時に備えて安全安心な街作りを実現するために、公共施設や河川などを中心に地域を包括するようにバッテリーコネクトとセンサー群を設置することで、停電が起きてもネットワークを途切れさせず、地域の被害を最小限に食い止めて速やかな復興が可能です。
たとえば、避難所の災害備蓄品情報を連携して過不足のない配給を実現したり、医療機関の混雑状況等を配信して被災者を迅速に医療につなげたり、高齢者や障がい者など、自力での避難が難しい方に電子タグを配布して、位置情報を特定することで速やかな救助を実現するといった施策が可能になります。
商業施設では、まず、ショッピングに訪れた来場客にWi-Fi環境を提供することで利便性を感じてもらい、顧客満足度の向上につなげることができます。
さらに、来場客のスマートフォンとバッテリーコネクトの間でビーコンによる通信、または、店内に設置したカメラからの画像認識により、バッテリーコネクトを通して行動履歴・行動動線データを取得し、購買行動情報を詳細に把握分析することで、販売戦略を強化することができます。
また、監視カメラのデータ取得にバッテリーコネクトを利用してセキュリティを向上させたり、自動販売機管理に利用したりできます。
センサー群やカメラおよびバッテリーコネクトの設置により、栽培データを収集できるようになります。これをAIによるデータ分析と組み合わせれば、農作物の質・量向上に役立ちます。ドローンによる空中撮影を行えば、地上状態の画像取得も可能です。こうしたデータ収集により、現地見回りが不要になります。
また、バッテリーコネクトの設置により農地にネットワークを敷設することで、遠隔での機械操作も可能になります。
こうしたスマート化は、高齢化が深刻な課題となっている農業の効率化につながります。
データの活用により、農業経験の浅い農家でも高い生産量を見込めることから、新たな農業の担い手を広げやすくなるでしょう。
また、カメラとバッテリーコネクトの組み合わせでは、画像・動画で作物を荒らす鳥獣の活動状態を検知し、対策に活用することも可能です。
災害時のネットワークインフラの維持を目的として企画されたバッテリーコネクトですが、災害時に備えた安全安心な街作りのためだけではなく、商業施設におけるマーケティング強化やセキュリティ向上、農業における生産性向上と効率化など、平常時でも活用幅の広いメッシュWi-Fiルーターです。しかも、バッテリー機能を備えているため、いざという時の備えにもなります。
上でご紹介した以外にも、アイデア次第で、漁業、林業、宿泊業などさまざまな業界での活用が期待できます。
アイネスでは、バッテリーコネクトの開発元である株式会社カンストと業務提携を結び、シンメッシュWi-Fiルーター「バッテリーコネクト」を用いたデータ収集・活用支援サービスをカスタムメイドで提供しています。
日頃の業務をスマート化しつつ、災害時に備えたいとお考えの自治体様、企業様はお気軽にお問い合わせください。
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