公開日
更新日
企業のIT基盤を支える専門部門である情報システム部(情シス)は、その重要性の高さの一方、慢性的な課題を抱えやすい部署の1つです。そのため、課題解決に向けた業務改善や業務効率化が求められます。
そこで本記事では、情報システム部(情シス)とはどんな部署なのか、抱えやすい課題などに触れたうえで、業務改善・業務効率化を進めるメリットや方法などを解説します。ぜひ自社での取り組みに活用してみてください。
情報システム部(情シス)は、企業のIT基盤を支える専門部門であり、社内のネットワークやサーバー、業務システムの運用・管理を担う存在です。近年はクラウドサービスの普及やリモートワークの浸透によってIT環境が急速に広がり、情シスに求められる役割も大きく変わりつつあります。従来はパソコンの初期設定や機器トラブルへの対応が中心でしたが、現在はIT戦略の立案やDX推進まで関与するケースが増えています。
企業活動がデジタルを中心に進むようになったことで、情シスが担う責務は業務の裏側を支えるものから、企業の競争力を左右するものへ進化しました。セキュリティ対策、クラウド移行、基幹システムの選定など、各部署では判断しきれない専門領域の意思決定を任されることも増えています。
とくに中堅・中小企業では、専任担当者が少ないなかでネットワークの保守、ヘルプデスク対応、データ管理など、多岐にわたる業務を同時にこなすケースが一般的です。
さらに、サイバー攻撃の高度化によりセキュリティ関連の知識も必須になりました。ゼロトラストセキュリティの構築や権限管理の徹底など、専門技術の重要性が増し、情シスの役割はより戦略的になっています。企業が安全かつ効率的にITを活用するためには、情シスの存在が欠かせません。
IT環境が複雑化した現在、情シスの負担は増える一方で、リソースは十分に確保されていないケースが多いため、構造的な問題が発生しやすくなっています。
ここでは、情報システム部が抱えやすい主な課題として、以下の5点について解説します。
・人手不足
・業務範囲が広い
・属人化しやすい
・業務の価値が見えにくい
・システムの複雑化
情シスの代表的な課題が人手不足です。IT領域は専門性が高い割に、担当者を増やしにくいという事情があります。とくに中小企業では「1人情シス」「兼任情シス」が珍しくありません。新規システムの導入や大規模なIT刷新を行いたくても、人員が足りず後回しになる企業も多いのが実情です。
情シスの仕事はネットワーク管理から社内ヘルプデスク、システムの導入調整やセキュリティの運用まで幅広いため、担当者1人では処理しきれない状況が生まれやすいのも大きな課題です。業務の優先度を判断するだけでも負担が大きく、緊急対応が続くと本来の改善業務まで手を回せなくなります。
システム管理のノウハウが特定の担当者に集中しやすい点も課題です。マニュアルが整備されていないまま運用が続くと、担当者が異動した途端に業務が止まるおそれがあります。これは中長期的なリスクとして見落とされがちなポイントです。
情シスの活動は「問題が起きない状況を維持すること」が価値であるため、成果が可視化されにくい傾向があります。その結果、経営陣に十分な評価をされず、人員増強やIT投資の意思決定が後回しになる悪循環が生まれやすい点も課題の1つです。
クラウド・SaaS・社内システムが混在する現代において、IT環境はかつてないほど複雑になりました。システム同士の連携やアカウント管理を整理できなければ、運用負荷は増大し、トラブル発生の可能性も高まります。情シスは継続的に情報収集を行い、最適な運用方法を模索し続ける必要があります。
情シスの効率化は、単なる負担軽減にとどまりません。企業全体のパフォーマンス向上やリスク低減にも直結するため、組織にとって大きな価値を生み出します。ここでは、情報システム部の業務改善・業務効率化を進める主なメリットとして、以下の4点についてチェックしておきましょう。
・会社全体の生産性の向上
・リスクの軽減
・働き方改革の推進
・システムの安定的な稼働
情シスの業務効率化が進むと、問い合わせ対応やトラブルシューティングに割いていた時間を、本来価値の高い業務に振り向けられるようになります。FAQやセルフヘルプの仕組みを整備したり、キッティングの標準化・自動化を行ったりすることで、日常的な雑務を大きく減らすことが可能です。
その結果、情シスは、業務フローの見直しや新システムの導入検討、データ活用の仕組みづくりなど、会社全体の生産性を高めるプロジェクトへより多くの時間を投じられるようになるでしょう。
また、情シスの改善は現場部門の生産性にも直結します。使いやすいシステム環境や安定したネットワーク、スムーズなアカウント管理が整うことで、社員一人ひとりの業務効率が底上げされます。ITトラブルや操作に関するストレスが減れば、現場の集中力も高まり、組織全体のパフォーマンス向上につながるでしょう。
情シスの業務改善は、企業が抱えるITリスクの低減にもつながります。マニュアル整備や業務標準化が進めば、担当者ごとの暗黙のルールに頼った運用が減り、属人化によるリスクを低減することが可能です。
また、セキュリティ対策の観点でもメリットがあります。システムやアカウント管理の棚卸しを進める過程で、不要な権限や使われていないサービス、パッチ未適用の端末などが見えてきます。これらを計画的に解消していくことで、情報漏えいやマルウェア感染のリスクを減らせるでしょう。
さらに、ログ管理や変更履歴の記録を徹底すれば、万が一トラブルが起きた際の原因究明もスムーズです。障害の発生パターンを分析し、再発防止策につなげるサイクルを回せるようになるでしょう。
情シスの業務効率化は、働き方改革の推進にも大きく貢献します。情シス部門は、他部署と比べて問い合わせ対応や突発的な障害対応が多く、残業や夜間・休日対応が発生しやすい部署です。業務の標準化や自動化、アウトソーシングの活用などで負荷を軽減できれば、担当者の長時間労働を抑えやすくなります。
また、テレワーク環境やクラウドサービスの整備を情シスが主導することで、全社的な柔軟な働き方の実現にも寄与します。社員が場所や時間にとらわれず働ける環境が整えば、採用力や定着率の向上にもつながり、企業の競争力強化にもプラスの効果が期待できるでしょう。
IT環境が複雑化するほど、システムの安定運用は企業活動の生命線となります。情シスの業務改善を進める過程で、監視体制やメンテナンス計画、障害対応フローを整備していくと、システム全体の安定稼働につながります。
システムが安定して稼働している状態は、現場の当たり前を支える重要な土台です。業務改善によってこの土台が強固になれば、会社は安心して新しいサービスやビジネスモデルにチャレンジできるようになり、結果として企業成長のスピードも高めやすくなります。
情報システム部の業務改善・業務効率化を進めるには、正しいステップを踏む必要があります。ここでは、具体的な手順として以下の5つのステップを順に説明します。
・業務範囲の明確化
・ツール・サービスの導入
・アウトソーシングの活用
・従業員のITリテラシー向上
・経営陣の理解の獲得
最初のステップとして取り組みたいのが、情シスの業務を見える化し、担当範囲を明確にすることです。日々こなしている業務を書き出してみると、「本来は他部署が担うべき作業」や「実は価値が低いルーティンワーク」が多く含まれているケースも少なくありません。
業務を棚卸ししたうえで、次のような切り口で整理していくと、優先度や担当範囲が見えやすくなります。
・情シスが責任を持って担うべきコア業務
・他部署へ委譲できる業務
・ツールや自動化で削減できる業務
・そもそも廃止しても支障がない業務
このプロセスを通じて、情シス本来の役割である「IT戦略の企画」「全社的なインフラ整備」「セキュリティポリシーの策定」などにリソースを集中しやすくなります。日常的に持ち込まれる「何でも相談窓口」的な業務との線引きも、ここで検討しておきたいポイントです。
業務効率化を進めるうえで、適切なツールやクラウドサービスの導入は強力な選択肢です。たとえば、以下のような領域でツール導入が効果を発揮します。
・IT資産管理ツールによる端末・ライセンス管理の自動化
・ヘルプデスクツールによる問い合わせ対応履歴の一元管理
・IDaaSやSSOサービスによるアカウント・認証管理の効率化
・MDM・EMMによるモバイル端末の一括管理
こうしたツールを活用すれば、従来は手作業で行っていた登録・更新・棚卸しといった業務の手間を大きく削減可能です。また、ログや履歴が自動的に蓄積されることで、状況把握や改善の検討も行いやすくなります。
導入にあたっては、単に機能が豊富な製品を選ぶのではなく、自社の運用体制やスキルレベルに合っているかどうかも重要です。試験導入やトライアルを通じて、現場メンバーが継続的に使いこなせるか確認したうえで、本格導入に進むと失敗が少なくなります。
情シスがすべてを自前で対応しようとすると、どうしてもリソース不足に陥りがちです。そこで有効なのが、業務の一部をアウトソーシングし、社内要員をより付加価値の高い業務へ集中させる戦略です。
アウトソーシングの対象としては、次のような業務が挙げられます。
・ヘルプデスク一次窓口
・端末キッティング・設置作業
・監視業務・障害一次対応
・バックアップ運用や定型メンテナンス
こうした業務を外部に委託することで、情シスはシステム全体の設計や改善、DXプロジェクトの推進など、戦略寄りの業務に専念しやすくなります。アウトソーシングにはコストがかかるものの、情シス担当者の残業削減や離職防止、プロジェクト遂行力の向上といった効果も期待できるため、トータルで見れば十分な投資対効果が得られるケースも少なくありません。
情シスの負荷を軽減するためには、情シス側の工夫だけでなく、利用部門のITリテラシー向上も欠かせません。社内のITスキルに大きなばらつきがある場合、初歩的な設定や操作の質問が情シスに集中し、本来注力すべき仕事に手が回らなくなるおそれがあります。
このような状況を改善するには、次のような取り組みが有効です。
・社内向けIT基礎研修やセキュリティ教育の定期実施
・操作マニュアルや動画コンテンツの整備
・よくある質問をまとめたFAQサイトの公開
・ITに詳しいスーパーユーザーを各部門に配置する
利用部門が自走できる範囲を少しずつ広げていければ、情シスへの問い合わせ件数は確実に減っていきます。
最後に欠かせないのが、経営陣の理解と支援を得ることです。情シスの業務改善には、システム投資や人員増強、アウトソーシング費用など、一定のコストが伴います。短期的な支出のみを見て判断されると、必要な施策が実行できず、現場の負荷だけが残ってしまう懸念があります。
経営陣に理解してもらうためには、「情シスの現状」と「改善によって得られる効果」を、数字と事例で伝えることが大切です。たとえば、問い合わせ件数・障害件数・復旧時間・システム停止による損失・人件費削減効果などを整理しておくと、投資対効果がイメージしやすくなります。
本記事では、情報システム部(情シス)の役割や直面しやすい課題、業務改善・効率化によって得られるメリット、そして具体的な取り組み方法について解説しました。情シスは、社内のITインフラを支えるだけでなく、DX推進や働き方改革をけん引する重要な存在です。一方で、人手不足や業務範囲の拡大、属人化、システムの複雑化など、多くの課題を抱えやすい部門でもあります。
業務改善には、業務範囲の明確化やツール・アウトソーシングの活用、ITリテラシー向上、経営陣との連携といった取り組みを組み合わせることが大切です。情シスの体制を整えることは、そのまま会社全体の生産性と競争力の向上につながるといってよいでしょう。
※ 本文に掲載されている会社名・団体名および製品名は各社または団体等の商標または登録商標です。 弊社は、情報サービスのプロフェッショナルとして、システムの企画・コンサルティングから開発、稼働後の運用・保守、評価までの一貫したサービスと公共、金融、産業分野などお客様のビジネスを支える専門性の高いソリューションをご提供しています。お気軽にご相談ください。
ITでお悩みのご担当者様へ
