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社内に点在するデータを効率的に統合・活用するためには、MDMツール(マスタデータ管理ツール)が欠かせません。MDMツールを導入すれば、社内のさまざまなデータを一元管理できるようになり、業務の効率化やデータ活用の促進など多くのメリットを得られます。
そこで本記事では、MDMツールとは何か、導入メリットなどを解説したのち、ツールの選び方や導入費用の目安などを紹介します。業務効率化に役立つ具体的なMDMツールも紹介するので、ぜひ最後までチェックしてください。
MDM(Master Data Management:マスタデータ管理)ツールとは、企業内に点在するデータを統合し、全社で矛盾のない共通データを運用するための仕組みです。マスタデータとは、製品・顧客・取引先・サプライヤー・従業員情報など、業務を横断して利用されるデータを指します。
本来、これらのデータは頻繁に参照され、各部門のシステムにも取り込まれる重要な情報ですが、運用が属人的になりやすく、企業内で差異が生じやすいという問題を抱えています。
たとえば、営業部門の管理する顧客マスタと、請求管理システムに登録された情報が一致しないケースは珍しくありません。
このようなデータの不整合は、業務ミスや二重入力の増加、分析結果の誤りといった影響を生み、結果として業務効率や経営判断の質を低下させる要因となります。MDMツールは、こうしたデータの乱立を抑え、全社のデータを「1つの正しい情報源」として管理するために導入されるものです。
MDMツールの導入は、企業にとって多方面で効果を発揮します。ここでは、MDMツールの導入によって得られる代表的なメリットとして、以下の4つについて詳しく説明します。
・業務の効率化
・意思決定・実行スピードの向上
・データ活用の促進
・コンプライアンス強化
MDMがもたらす最も大きな効果のひとつが、業務効率の大幅な改善です。企業内には、多数の業務システムが存在し、それぞれが顧客情報や製品マスタ、取引先データを保持しています。この状態では、データ更新のたびに複数システムへ二重・三重入力する必要が生じ、作業負荷が増えるばかりかミスも発生しやすくなります。
MDMツールを使うと、マスタデータを一元管理できるため、入力作業の重複を削減できます。更新されたデータは必要なシステムへ自動的に配信されるため、情報の整合性が保たれた状態で業務を進行可能です。
さらに、表記揺れや重複データが原因で発生していた確認作業や照合作業も削減することができます。MDMツールが導入されれば、整備された正確なマスタデータをもとに業務が進むため、これまで手作業で行っていた確認・修正作業から解放されます。その結果、担当者はより付加価値の高い業務へ時間を割くことが可能となり、組織全体の生産性が高まるでしょう。
データの信頼性が高まることは、経営判断のスピード向上に直結します。MDMが整っていない企業では、部門ごとに異なるデータを参照していることが多く、「同じ顧客の売上が、部門によって数値が違う」「部署間で在庫数量の認識が異なる」といった問題が頻発します。データが統一されていない状態では、意思決定に時間がかかり、判断ミスにつながる可能性も高まるでしょう。
MDMツールでは、「Single Source of Truth」を実現でき、全社で同じデータを参照できます。これにより、会議や打ち合わせでのデータ確認に時間を取られず、スムーズに議論へ進める環境整備が可能です。経営層も、最新で正確なデータをもとに戦略判断が行えるため、変化の速い市場にも対応しやすくなるでしょう。
また、意思決定だけでなく、実行スピードにも影響があります。たとえば、新商品を発売する際、商品マスタの登録・更新作業に時間がかかる企業は少なくありません。MDMツールによってプロセスが整備されると、必要な情報が一括で登録され、関連システムへ自動配信されます。その結果、商品発売までのリードタイム短縮にもつながり、迅速な市場投入が可能です。
デジタル化が進む現代では、データ活用が企業競争力を左右する時代に入っています。しかし、データ分析を行うための前提として「正確なデータ」「重複や欠損がないデータ」「統一ルールで管理されたデータ」が欠かせません。MDMツールは、この分析可能なデータ基盤を整備するうえで不可欠な存在です。
MDMツールを導入すると、データの紐づけ・名寄せ・重複排除が効率的に行われ、分析の前処理を大幅に簡略化できます。結果として、BIツールやAI分析の精度が向上し、迅速にビジネスへ活かせるデータが手に入ります。
MDMは、企業におけるガバナンス強化やリスク管理にも大きく寄与します。データ管理が各部門に分散している企業では、誰がどのタイミングでデータを更新したのか把握できないケースが多く、内部統制の面で問題が生じることがあります。また、誤ったデータが登録されてしまうと、請求ミスや法令違反につながるおそれもあるため注意が必要です。
MDMツールでは、データの登録・更新・削除の履歴が記録され、操作ログをたどることができます。アクセス権限の設定や承認ワークフローも実装できるため、不正操作の防止や誤登録の抑止につながります。とくに個人情報や取引データを扱う企業では、データの正確性と安全性を保つ仕組みは欠かせません。
MDMを導入する際は、単にツールを導入するだけでは不十分です。ここでは、MDMツールの効果を最大化するための実践的なステップとして、以下の5つの手順を解説します。
・目的の明確化
・データの準備
・運用プロセスの策定
・ツールの選定
・継続的な運用
MDM導入に着手する際、最初に行うべきことが目的設定です。目的が曖昧なままプロジェクトを進めると、必要な機能や運用範囲が定まらず、結果として何のためのMDMなのかが不明確な状態に陥ります。
目的設定では、以下のようなポイントを明確にしましょう。
・どのデータに課題があるのか
・具体的にどの業務で支障が出ているのか
・どのような状態を実現したいのか
たとえば、商品マスタの表記揺れが原因で出荷ミスが多発しているのであれば、「商品マスタの整備による誤出荷防止」が目的になります。顧客データの重複が多くマーケティング施策の精度が低いのであれば、「顧客統合による施策精度の向上」が目標になるでしょう。
MDM導入における次のステップは、現状データの棚卸しです。どの企業でも、実際にデータを確認すると「欠損」「重複」「表記揺れ」「古い情報が残っている」といった問題が大量に見つかります。こうしたデータをそのままMDMに移行してしまうと、ツールの導入効果が十分に発揮されません。
まずは、対象となるマスタデータを特定し、現状を評価します。商品マスタ・顧客マスタ・取引先マスタ・社員マスタなど、企業によって対象範囲は異なりますが、全データの品質を均等に改善する必要はありません。重要度が高いデータから優先して整備することで、効率的にプロジェクトを進められます。
データ準備には、次のような作業が含まれます。
・重複データの統合(名寄せ)
・表記揺れの解消
・コード体系の整理
・最新情報への更新
・不要データのアーカイブ
とくに表記揺れは企業が抱える典型的な問題で、「株式会社」と「(株)」の違いだけで別データとして登録されるケースもあります。MDM導入前にデータ品質を一定水準まで引き上げることで、移行後の運用がスムーズになり、分析の精度を向上させることが可能です。
MDMを運用するうえで最も重要な要素が「データを誰がどのようなルールで管理するか」です。ツールを導入しただけではデータ品質は維持されず、運用ルールが曖昧なままではすぐにデータが乱れ、結果としてMDMが形骸化します。
運用プロセス策定では、次のようなポイントを明確にします。
・マスタデータの登録・更新・削除を行う担当者の定義
・権限設定とワークフローの設計
・承認プロセスの整備
・データ品質基準の設定
・更新タイミングのルール化
たとえば、商品マスタの登録を現場担当者の判断に任せている企業では、表記揺れやコード体系のばらつきが発生しやすくなります。MDM導入後は、データ管理の責任を明確にし、一貫性を保てる仕組みを構築しましょう。
また、業務システムとの連携プロセスも重要です。MDMに登録されたデータが各システムにどのタイミングで反映されるのか、異常が発生した場合の対応フローはどうするのかといったルールも整備しておく必要があります。
MDM導入の成否は、ツール選定にも大きく左右されます。企業が抱える課題や運用レベルに合ったツールを選ばなければ、必要な機能が不足したり、逆に複雑すぎて使いこなせなかったりする可能性があります。
将来的な拡張性も見据え、段階的に管理領域を広げられるツールを選択することが望まれます。必要以上に大規模なツールを導入するとコストや運用負荷が増えるため、企業規模と運用体制に適した選定が必要です。
MDMは導入して終わりではありません。運用開始後に、データ品質を維持・向上させる仕組みを整えておく必要があります。とくに、業務フローの変更や組織改編、新規システム導入などのタイミングでマスタデータに影響が出るため、継続的な改善活動が求められます。
継続運用では、次の取り組みが有効です。
・定期的なデータ品質チェック
・運用ルールの見直し
・担当者教育の実施
・運用レポートの作成
・改善計画の策定と実行
データ品質は、時間が経つほど自然と低下していきます。人為的な入力ミス、新規取引先の追加、コード体系の変更など、日々の業務が積み重なることで乱れが生じるためです。MDMの目的が正確で一貫性あるデータを保つことである以上、継続的な維持管理は欠かせません。
MDMツールは各社から多様な製品が提供されています。ここではツール選定時に確認すべきポイントとして、以下の3点をチェックしておきましょう。
・機能
・コスト
・サポート体制
MDMツールを選ぶ際、まず重視すべき要素が必要な機能を揃えているかどうかです。MDMは単なるデータ格納庫ではなく、品質を保ちながらデータを統一管理するプラットフォームであり、以下の機能が揃っているかどうかが重要になります。
・データ統合・名寄せ機能
・データクレンジング機能
・ワークフロー・承認機能
・システム連携機能
・データモデルの柔軟性
データ統合・名寄せ機能は、複数システムに分散したデータを統合し、重複データを自動的に照合・統合する機能です。顧客名の揺れや住所の違いなどを吸収し、一意のマスタデータを作成する仕組みが求められます。
データクレンジング機能は、不備のあるデータを自動補正したり、項目単位で整合性をチェックしたりする機能です。欠損データの補完、コード形式の統一なども含まれ、データ品質の向上には欠かせません。
ワークフロー・承認機能は、データの登録や更新を行う際に承認フローを設定できる機能です。承認ルートの柔軟性、履歴管理のしやすさなど、実運用を左右する部分なので、慎重にチェックしましょう。
システム連携機能があれば、MDMは基幹システム・販売管理・ERP・CRMなど、多くのシステムと接続できます。API連携・バッチ連携・ファイル連携など複数方式に対応しているかどうかが重要です。
企業ごとに必要な項目や管理形態は異なります。データ項目の追加・変更がしやすいか、将来的に拡張できるかといったデータモデルの柔軟性も確認すべきポイントです。
これらの機能が揃っているMDMは運用の安定性が高まり、データ管理の負荷を大幅に下げることにつながります。
コストは導入判断に直結するため、慎重に検討したい要素です。MDMツールの費用構造は製品ごとに大きく異なりますが、主に以下の要素で構成されます。
・初期導入費用:要件定義、設定、データ移行など
・ライセンス費用:クラウドかオンプレミスかで変動
・保守サポート費用:アップデートや問い合わせ対応など
とくにクラウド型のMDMでは、月額または年額の利用料が大きく影響します。ユーザー数課金、データ量課金、機能単位課金など方式もさまざまなため、料金体系の理解が欠かせません。
また、単純な導入費用だけでなく運用にどれだけ手間がかかるかも重要な観点です。運用の手間が大きいツールを選んでしまうと、結果的に人件費が増え、総合的なコストが高くなるケースもあります。
費用は安ければ良いというものではなく、企業のデータ管理レベルと運用体制に合ったバランスの取れた製品を選ぶ視点が必要です。
MDMは企業全体を巻き込むプロジェクトになるため、導入後のサポートが不十分だと運用が停滞しやすくなります。そのため、サポート体制は選定の際にとくに重要視されるべき項目です。
サポート力を見極める際は、次の観点を確認します。
・導入支援の充実度:初期設定、データ移行、運用ルールの策定などの支援があるかどうか
・問い合わせ対応の迅速さ:専用窓口の有無、対応時間、レスポンスの速さ
・自社の業種に詳しい担当者の有無:製造業、小売業など、業界特有のマスタ構造やデータ課題を理解しているか
・トレーニングや勉強会の有無:担当者教育がしやすい環境が整っているかどうか
MDMは長期間運用する基盤であり、トラブル時のサポート品質が運用継続に大きく影響します。ツールの機能が優れていてもサポートが弱い製品は、総合的に見ればリスクが高い選択肢です。
MDMツールの導入費用の主な内訳は以下のとおりです。
・初期導入費用(設計・構築・設定)
・ライセンス費用(利用料)
・データ移行費用
・保守・サポート費用
初期導入費用とライセンス費用は、MDMツールがクラウド型かオンプレミス型かによって異なります。それぞれの費用目安は以下のとおりです。
・クラウド型MDM:月額 10〜100万円程度
・オンプレミス型MDM:初期費用 500万〜数千万円ほど
これにプラスしてデータ移行費用や保守・サポート費用が発生します。実際には企業のデータ量・マスタ項目数・システム連携数によって費用が大きく変わるため注意が必要です。
本記事では、MDMツールとは何か、メリットや導入費用目安、ツールの選び方などについて解説しました。MDMツールは、企業内に散在するマスタデータを統合し、品質と一貫性を保ちながら活用できる環境を整える仕組みです。データの重複や不整合が解消されることで、業務の手戻りや確認作業が減り、意思決定のスピードや精度も向上します。
また、全社で同じデータを参照できるため、部門間の連携がスムーズになり、ガバナンス面でも効果を発揮します。一方で、導入には目的設定やデータ整理、運用ルールの構築など、準備すべき工程も多く、ツールによっては数百〜数千万円の導入費用が発生する場合もあるため、慎重なツール選定が必要です。
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