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新聞やテレビ、ネットニュースなど、日本のメディアで目にしない日はないといっていいほど、その動きが注目され、私たちの生活にも大きな影響を与えている大企業群「GAFA」。
米英では「The Four」とよばれ、やはり動向が注目を集めています。
経済を大きく動かし、時に法制度をも変えてしまうほどの影響力を持つGAFAですが、具体的にはこれまでにどのような変化をもたらしてきたのでしょうか?
本コラムでは、GAFAが世界に与えてきた影響を良い面と悪い面に整理しながら振り返ります。
改めて「GAFA」とは、Google、Amazon、Facebook、Appleのテクノロジー系企業4社をまとめた呼称です。ここにマイクロソフトを加えてBig Five(ビッグ・ファイブ)とよばれることもあります。
GAFAの4社はいずれも米国の企業で、同国の時価総額ランキングでは常に上位に位置します。そして米株式市場に占める割合は20%を超え史上最高となっているのです。※2020年7月31日時点
また、「プラットフォーマー」とよばれ、インターネット上でECやSNSなど主にBtoCの「プラットフォーム(基盤)」を作り、プラットフォーム上で大規模なサービスを提供しています。
これらのことから、米国内だけでなく世界規模で大きな影響力を持ち、利便性を向上させて生活を豊かにしてくれるといったメリットをもたらす一方で、個人情報の流出問題が起こるなど負の影響も生み出しています。
GAFAが世界に与えてきた影響のうち、まずは私たちにメリットをもたらす面について見ていきましょう。
GAFAが提供する製品・サービスは、無料だったり低価格で利用できるにもかかわらず、利便性やクオリティが高いものが多く、世界規模で広がる一因となっています。
たとえば、Googleが提供する検索エンジンやAndroid OS、SNSでトップシェアを誇るFacebook、レコメンド機能が充実し、配送スピードの速いECのほか動画や音楽配信なども享受できるAmazonのうち、毎日1つ以上を利用しているというユーザーは少なくありません。
価格の面でいえばAppleはApp Storeなどを除き事情が異なりますが、Apple WatchやApple Payといった他にはない新しいプロダクトやサービスを生み出しており、新たな顧客体験と利便性を生み出しています。
小規模事業者を中心とする企業にとってもメリットがあります。
まずは、GAFAが構築・運用するプラットフォームを利用して、簡単にビジネス活動が行える点です。具体的には、Amazonマーケットプレイスに出店したり、Facebook上で公式アカウントから情報発信したり広告を出稿することでプロモーションを行えるといったことです。
これらの利活用は、低コストでスモールスタートできると同時に、軌道に乗らないことがわかれば即撤退することも可能です。これはプラットフォームを利用してビジネスを行うメリットといえるでしょう。
GAFAはメリットだけではなく、私たちの生活に脅威ももたらしました。
GAFAらプラットフォーマーは、個人情報を取得して集積し、それらビッグデータを解析することによりサービスなどの向上に活かしています。
GAFAらが個人情報を取得する際は、基本的に事前に同意を得た上で適切な管理を行うことを誓約していますが、いくつかの問題があります。
一つ目は、情報漏えいの問題です。実際に、Facebookでは2018~2020年にかけて数回にわたり大規模な情報漏えいが起きています。
二つ目は、サービスの利用記録などから、誰がいつどこへ行き、どんな行動を取ったかといった詳細な行動ログが、本人の知らない間に把握されてしまうというプライバシーの侵害です。
たとえ情報漏えいが起きず、集めた個人情報を匿名データとして扱ったとしても、複数の情報を組み合わせることで個人がある程度まで特定できてしまうことから、プライバシー侵害の可能性は否定し切れません。
この個人情報取得に関しては、それまであまり問題視されてこなかった「cookie※」の取得を無断で行うことの是非にまで議論が及び、EUでのGDRP採択につながりました。 また、日本でも、少子高齢化などの問題に対処するために行政と民間で協力してデータ活用を進める必要性から「官民データ活用推進基本法」が制定され、この中でGAFAが取得したビッグデータの開示が求められることとなりました。GDRPについては、後述します。
※cookie…WebサーバとWebブラウザ間で状態を管理する通信プロコトル。
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GAFAが世界中に行き渡ったプラットフォームを使ってビジネス展開を進める中、消費者としては新たな製品・サービスという恩恵を受けることができますが、後発で市場に参入しようとする企業、特に中小企業にとっては参入が難しくなり、寡占化が進行してしまいます。
それでなくても、「GAFAとは?」でお伝えした通り、GAFAは企業価値の資産総額が日本の国家予算をも超えるほどに大きく、それだけ動かせる営業資本も潤沢に有しているということ。既存市場だけでなく、新たな市場へGAFAが参入する際も優位だといえるでしょう。
上記のようなマイナスの影響に対し、国も対策に乗り出しました。
「GAFAの脅威」でも触れましたが、EUでは、個人データとその処理をEU内で統一基準下で管理保護するために法的要件を規定した「GDPR(General Data Protection Regulation/EU一般データ保護規制)」が2018年5月に施行されました。
この中で、企業などはcookieを含む個人情報を取得する際に利用方法を開示した上で同意を得なければならず、ユーザーの希望があれば削除しなければならないと規定しました。
2020年2月には、EUのデジタル戦略が公表され、EU内の企業が「製造業」「健康」といったカテゴリごとにデータを持ち寄り、プールして共有できるようにするというプランが明らかになりました。
さらに2020年10月には、GAFAを含む20社の巨大テック企業に対し、より厳格に規制していく方針を検討していることも明らかになり、今後、GAFAの影響力を縮小する動きはますます強くなりそうです。
一方、GAFAのお膝元である米国内でも規制が強化されています。
米司法省は2019年7月、反トラスト(独占禁止)法違反の疑いで、米国内IT企業の調査を開始すると発表しました。調査対象企業は開示されなかったものの、当時からGAFAの4社であると推測されており、実際に2020年7月、テレビ会議方式でGAFAの4人のCEOが出席する議会公聴会が米議会下院司法委員会によって実施されました。
この場で議員から、Googleは検索サービス分野において他社を排除している、Amazonはマーケットプレイスに出店する事業者の競合の販売データを不正に利用していた、Facebookは競合つぶしの目的で企業買収を行っている、AppleはApp Store上で競合他社のアプリ審査を厳しくしている、とそれぞれ批判されたといいます。議員の中には、「GAFA解体」を公約として掲げる人もおり、議会の中でGAFA解体論は根強いようです。
公聴会で各社のCEOは、米国の雇用拡大や、中国などに対する国際競争力の面で貢献した点をアピールしましたが、米司法省は2020年10月20日、「検索エンジンや検索広告で独占的な地位を使って競争を阻害した」としてGoogleを提訴しました。
GAFAに対する日本の法規制は「GAFAの脅威」でもお伝えしましたが、「官民データ活用推進基本法」の中で「オープンデータ」を規定し、GAFAは取得したデータを独占できなくなりました。
中小企業などがGAFAから不公平な契約を強制されたとの訴えに対しては、既存の独占禁止法の「優越的地位の濫用」による規制が可能だと考えられており、日本のGAFAへの対応整備はこれからだといえそうです。
GAFAは、今回の新型コロナウイルス感染拡大を受け、外出禁止下でのテレワークや巣ごもり需要などを追い風に業績が好調で、少なくとも当面は時価総額を伸ばしていくでしょう。
企業としては、法整備など国の対応を注視しつつ、プラットフォームを活用するのか、市場へ参入していくのか、自社の強みを活かせる道を探っていきたいところです。
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