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自治体情報システム標準化とは、日本全国の1,700以上ある自治体で住民記録などの業務を標準準拠システムへ移行することです。標準化のインフラとしては、デジタル庁が整備するマルチクラウド「ガバメントクラウド」が活用される見込みです。
全国の自治体で業務利用するシステムを標準化することで、自治体業務の効率化やシステム関連コストの削減、住民の利便性向上といったメリットが期待できます。 自治体情報システム標準化の期限は2025年度末となっており、2023年が正念場になるともいわれています。
本コラムでは、自治体情報システム標準化の目的や対象となる業務、効果・メリットなどについてご紹介いたします。
自治体情報システム標準化とは、日本全国の1,700以上ある自治体が個々にシステムを導入・運用することで発生している無駄な金銭コストや非効率性を解消するために、2020年12月に策定された「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」の中で、2026年3月末までに住民記録などの業務を標準準拠システムへ移行することが盛り込まれたものです。
標準準拠システムには、デジタル庁が整備するマルチクラウドである「ガバメントクラウド」が活用される予定です。
前述の通り、自治体情報システム標準化は2026年3月末までに移行することになっています。
対象となる20の業務について、業務システムの標準仕様書は2022年8月31日に出揃っており、2025年度末までに標準準拠システムへの移行を目指しています。なお、2023年度以降は移行支援期間と定められています。
こうした期限は、2022年10月に閣議決定された「地方公共団体情報システム標準化基本方針」の中で定められています。
計画が策定されてから移行までの期限は5年3ヵ月となっています。
対象業務については、「標準化の対象となる業務」でご紹介いたします。
自治体情報システムを標準化するのは、「自治体情報システム標準化とは」でお伝えしたように、従来、各自治体が個別にシステムを導入していたために生じている無駄な金銭コストや効率の悪さを解消するためです。
自治体情報システム標準化を実現して得られる主な効果・メリットとして、次の5点が期待できます。
自治体情報システム標準化が行われる前は、各自治体がバラバラに基幹システムや業務システムを企画、選定、導入、運用してきたため、自治体ごとにこれらの業務負担やコスト負担が発生してきました。標準化することで、これらの負担軽減が見込めます。これにより、人手不足の深刻化が予測される今後の自治体業務においても、生産性を維持・向上できる可能性が見えてきます。
共通の基準・手順に基づく設計・構築にって開発の効率化が図られ、システム開発費の低減が期待できます。
また、システムの運用保守にかかる人件費や、アップデート、システム改修にかかるコストの削減も可能になります。
さらに、自治体運営が効率化さることによるコスト削減も実現できるでしょう。
全国の自治体でプラットフォームがガバメントクラウドに統一され、その上で稼働するシステムも標準化されることで、システムで扱うデータを一元管理したり連携したりできるようになります。
その結果、政府は各自治体のデータを集計・分析し、日本の現状を捉えた上で新たな政策を打ち出したり、的確な意思決定を下したりすることができるようになるでしょう。 自治体においては、データ連携によって新たな住民サービスを提供できるようになります。
また、自治体同士のシステム間の互換性が高まることで、システムの統合やアップグレードにかかるコストも削減できます。
標準仕様書により、システムの規格が統一されることから、異なる自治体同士でのデータ連携やサービス連携が可能になり、住民の引っ越しの際など、自治体をまたいで住民サービス利用が可能になる可能性があります。
また、複数の自治体が協力して新たな住民サービスを創出することで、住民の利便性が向上するでしょう。
自治体情報システムの標準化が実現されれば、システムベンダーは、標準化されたインターフェースやプロトコルを利用して開発が行えるようになるため、特定の自治体に合わせた大規模なカスタマイズを行う必要がなくなり、開発の難易度は下がると予想されます。このため、参入ハードルが下がり、新規参入者が増加するでしょう。
また、一つのシステムベンダーが異なる複数の自治体に対してシステムを提供することのハードルも下がります。
このような理由から、自治体情報システムの標準化によって、システムのベンダー間の競争の促進が起こり、価格競争や技術向上といった効果が見込めます。
さらに、自治体側がシステムベンダーの替えも行いやすくなり、ベンダーロックインの解消にもつながるでしょう。
自治体では数多くの業務が実施されており、業務の種類・内容は自治体によっても異なります。その中から、システム標準化の対象として、住民情報を扱う基幹業務20の業務が選ばれました。
以下で、分野別に業務とそれを支援するシステムの概要をご紹介いたします。
住所・氏名・性別・生年月日を記載した住民票を管理するシステム
在外選挙人名簿と選挙時の投票状況を管理するシステム
国民年金の加入者情報などを管理するシステム
法人や個人の土地、家屋および償却資産にかかる税金の徴収などに関する業務を支援・管理するシステム
住民に対する行政サービスにかかる税金の徴収などに関する業務を支援・管理するシステム
法人に対する行政サービスにかかる税金の徴収などに関する業務を支援・管理するシステム
軽自動車やオートバイなどの所有者に課せられる税金の徴収などに関する業務を支援・管理するシステム
国民健康保険への加入申請や保険料の徴収、高額療養費の支給申請などの業務を支援・管理するシステム
身体障害者手帳の交付申請の受付や受給者証の発行などを支援・管理するシステム
後期高齢者医療制度の業務を支援・管理するシステム
介護保険制度に基づく業務を支援・管理するシステム
児童扶養手当の支給事務に関する業務を支援・管理するシステム
児童手当制度の各種請求や届出の受付管理を始めとする業務を支援・管理するシステム
妊婦健診から新生児訪問、保育事業、放課後児童クラブまでの業務に関する支援・管理を行うシステム
戸籍を管理するシステム
住民票記載の正確性を担保するために住民票と戸籍の情報をつなぎ合わせるシステム
生活保護の申請・決定を中心とする事務作業を支援・管理するシステム
保健指導や母子保健、予防接種、特定保健指導などの業務を支援・管理するシステム
児童・生徒の学齢簿や就学援助の申請・給付業務を支援・管理するシステム
印鑑登録申請や印鑑登録証明書の発行などに関する業務を支援・管理するシステム
全国の1,700以上の自治体が使用するシステムをガバメントクラウド上で標準化する「自治体情報システム標準化」の期限は2025年度末に迫っています。
これが実現されれば、自治体業務の効率化や人材不足問題の解消など、さまざまなメリットが期待できます。
各自治体は情報収集を行い、現在の情報システムに関する要件を整理して、これに備えましょう。
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