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品目マスタとは?主要テーブルとテーブル相関図について解説

品目マスタとは?主要テーブルとテーブル相関図について解説

品目マスタとは、SAPにおいて品目に関する情報を管理するデータベースです。用途別に複数のテーブルで構成されており、適切な運用には、各テーブルの連携や関係性について正しく理解する必要があります。

とはいえ、品目マスタは主要テーブルだけでも種類が多く、「品目マスタの各テーブルの用途を整理したい」「主要テーブルの関係性を知りたい」といった方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、品目マスタとは何か、構成する主要テーブルの用途や、各テーブルの相関図などについて解説します。品目マスタの運用でお困りの方は、ぜひ参考にしてください。

品目マスタとは?

品目マスタ(Material Master)は、SAPにおいて品目に関するあらゆる情報を管理する中核データベースです。品目コードごとに基本情報・テキスト・組織別データ・在庫評価・販売設定など、多様な属性を格納し、物流・購買・会計・販売・製造など複数モジュール間でデータを共有します。

品目マスタを構成する主要テーブル

品目マスタは複数のテーブルで構成されており、各テーブルは用途別に特定の機能を担っています。主要テーブルの用途や内容については、以下の表のとおりです。

テーブル 用途 主なキー項目 主な内容
MARA 一般データ 品目コード(MATNR) 品目タイプ、産業コード、基本単位、品目階層など全体共通情報
MAKT テキスト 品目コード、言語(SPRAS) 各言語での名称や説明文を言語別管理
MVKE 販売データ 品目コード、販売組織(VKORG)、流通チャネル(VTWEG) 出荷プラント、勘定設定グループ、明細カテゴリなど販売設定
MARC プラントデータ 品目コード、プラント(WERKS) ロット管理区分、ステータス、利益センタなどプラント単位の属性管理
MARD 保管場所データ 品目コード、プラント、保管場所(LGORT) 利用可能在庫や転送中在庫など、在庫数量情報
MDMA MRPエリアデータ 品目コード、MRPエリア MRPタイプ、安全在庫、ロットまとめ方式など資材所要計画情報
MBEW 評価エリアデータ 品目コード、評価エリア 評価クラス、原価管理区分、価格単位など会計評価情報
MLAN 税分類データ 品目コード、国コード 税分類コードや税率など、輸出国・国内税制に対応
MARM 数量単位データ 品目コード、数量単位 基本単位と補助単位の換算係数
T179 品目階層 階層構造 品目分類の階層構造(収益分析・分類管理)に使用

代表的な10のテーブルについて、それぞれの役割や格納されるデータの特徴を詳しくチェックしておきましょう。

MARA(一般データ)

MARAはSAPの品目マスタの基幹となるテーブルで、すべての組織レベルで共通に使用される「一般データ」を管理します。ここには品目コード(MATNR)をキーに、品目タイプ(MTART)・業種(MBRSH)・基本数量単位(MEINS)・品目グループ(MATKL)などの基本属性が格納されます。これらのデータは他のモジュール(MM・SD・PP・FI・COなど)から参照されるため、SAP全体の業務において非常に重要な役割を果たします。

とくにMARAに含まれる「品目タイプ」は、品目の分類と制御に深く関わっており、たとえば仕入れ可能な品目かどうか、在庫管理対象か、製造対象かといった基本的なフローがこのタイプによって制御されます。また、削除フラグや基本表示単位など、マスタ運用の統制や可視性にも影響を与える情報が多く含まれているのも特徴です。

MARAは他の品目関連テーブル(MAKTやMARCなど)と結合する際の中心となるため、設計ミスやデータ不整合が起こると全社的な業務障害につながるリスクがあります。したがって、初期登録や更新時のルール整備が重要です。

MAKT(テキスト)

MAKTは、品目の名称や説明といった「テキスト情報」を管理するテーブルです。品目コード(MATNR)と使用言語(SPRAS)をキーとしており、たとえば同じ品目でも、日本語名・英語名・中国語名といった複数の言語でそれぞれ名称を設定することが可能です。

また、SAPの品目マスタ画面で表示される品目名は、基本的にMAKTから取得されます。とくにMAKTのテキスト内容は、マスタデータを検索・表示する場面で多くのユーザーが目にする項目であるため、社内の共通言語としても非常に重要な役割を果たします。

商品名や規格名に表記ゆれがあると、業務効率や検索性に悪影響を及ぼすため、マスタ登録時には表記ルールの統一が必要です。

MVKE(販売データ)

MVKEは、SAPにおける販売組織(VKORG)および流通チャネル(VTWEG)ごとの品目情報を管理するテーブルです。品目コードに対して、販売地域ごとの設定値を個別に定義できるため、国や販売チャネルによって異なる価格設定や出荷フローに柔軟に対応できます。

たとえば「出荷プラント」「品目分類」「勘定設定グループ」「販売ステータス」「明細カテゴリグループ」など、販売伝票処理や出荷時の動作に影響する項目が多く含まれます。同じ品目でも日本法人とアメリカ法人では異なる出荷倉庫や税区分を使用する場合、このMVKEによって分岐制御が可能です。

SD(販売管理)モジュールでは、受注入力時にこのテーブルの設定内容が伝票明細にコピーされるため、販売部門での業務設計に直結する重要なテーブルの1つです。

MARC(プラントデータ)

MARCは、品目のプラント(製造・在庫拠点)単位での属性情報を管理するテーブルです。同じ品目コードでも、「製造工場では生産可能だが、営業所では在庫管理のみ」といった異なる扱いが必要なケースに対応できます。

主な管理項目としては、「ロット管理」「発注単位」「調達タイプ」「在庫ステータス」「工程設計有無」「利益センタ」などがあり、生産・購買・会計などの複数業務に関与する情報が集約されています。

資材所要計画(MRP)を動かすうえでも、このテーブルの設定内容が判断ロジックに影響するため、MARCの設計ミスは需給計画の不整合につながるリスクがあります。

MARD(保管場所データ)

MARDは、MARCと連携し、品目の在庫情報を「保管場所(LGORT)」単位で管理するテーブルです。プラント全体ではなく倉庫や棚番といった細かい区分ごとに在庫数を保持できるため、在庫精度の向上や倉庫最適化に欠かせない役割を担います。

このテーブルには、各保管場所における「利用可能在庫」「品質検査中」「仕掛中」「転送中」などのステータスごとの数量が格納されます。たとえば、「営業倉庫には100個あるが、生産用倉庫には20個しかない」といった状況も、このテーブルを見ることで正確に把握可能です。

また、WMS(倉庫管理システム)やロジスティクス業務との連携においても、MARDは中心的な役割を果たします。在庫差異やロット別残数の確認など、実運用上で最も参照頻度の高いテーブルの1つです。

MDMA(MRPエリアデータ)

MDMAは、MRP(資材所要計画)をより柔軟に運用するために用意された「MRPエリア」単位のテーブルです。MARCがプラント単位であるのに対し、MDMAはプラント内をさらに細かく分割したエリアごとに、MRPパラメータを設定できるようになっています。

たとえば、同じ倉庫でも製造ライン用と販売用で在庫の持ち方や補充方法を変えたい場合、MDMAを使ってMRPタイプ・安全在庫・調達先・ロットサイズなどをエリア別に定義可能です。より現場に即した需給計画を自動化でき、在庫最適化の実現につながります。

MBEW(評価エリアデータ)

MBEWは、品目ごとの「財務評価」に関する情報を保持するテーブルで、評価エリア(通常はプラントまたは会社コード)単位で管理されます。評価クラス・原価管理区分・標準原価・移動平均価格・価格単位・在庫評価方法などが主な項目です。

この情報は、会計処理や原価計算の基礎となるため、FI(財務会計)やCO(管理会計)モジュールと強く連携します。

また、標準原価と実際原価の差異を比較・分析する際にも、MBEWは不可欠です。複数プラントで同一品目を扱う場合は、評価エリア単位で異なる価格管理も可能となるため、より柔軟な財務戦略が実現できます。

MLAN(税分類)

MLANは、品目ごとの税分類情報を管理するテーブルで、品目コード(MATNR)と国コード(ALAND)をキーに構成されています。品目に対する課税・非課税の区別や、税率、税コードなどの情報を国ごとに個別管理できる仕組みです。とくに輸出入業務や海外取引を行う企業では欠かせないデータ基盤となります。

たとえば、日本国内では標準課税となる品目が、他国では非課税や軽減税率の対象になるケースがあります。MLANを使えば、それぞれの国に応じた税分類を品目単位で登録できるため、販売伝票や請求書作成時に正しい税処理が可能です。

また、SD(販売管理)やFI(財務会計)での税コード決定ロジックにもこのテーブルの情報が活用されるため、誤設定があると消費税の計上ミスや課税対象外取引の誤処理が起こる恐れがあります。税務コンプライアンスの観点からも、正確なMLAN管理が求められます。

MARM(数量単位)

MARMは、品目におけるさまざまな「数量単位」とその換算情報を管理するテーブルです。基本数量単位(MEINS)に対して、補助単位や出荷単位、発注単位など複数の単位を定義し、それぞれに換算係数を設定することで、取引や業務運用の柔軟性を確保します。

また、単位換算はマスタ登録時の数値精度にも影響を与えるため、MARMの設定ミスは数量誤差や在庫の過不足の原因となる可能性もあります。業務上頻繁に参照されるテーブルであり、マスタ整備や運用ルールの明確化が欠かせません。

T179(品目階層)

T179は、品目を論理的に分類・整理するための「品目階層」情報を保持するテーブルです。マーケティングや分析、販売管理などの場面で品目群を集約して管理したい場合に利用されます。たとえば「家電 > 映像機器 > テレビ」といったカテゴリを階層構造で定義し、各品目とひも付けることで、業務上の分類管理がしやすくなります。

この階層情報は、販売伝票や販売分析レポートなどで使用されるほか、収益認識や統計処理、在庫集計にも活用されます。SAPの中ではSDモジュールやBW(Business Warehouse)と連携することで、品目のグルーピングや分類別抽出などの高度な分析が可能です。

品目マスタにT179が設定されていることで、品目の属するカテゴリを検索条件として利用できるようになり、情報の管理や抽出効率も大幅に向上します。

品目マスタのテーブル相関図

以下の表は、品目マスタ主要テーブル間の相関関係を示したものです。

子テーブル 親テーブル 接続キー(主キー) 関連項目例 説明
MAKT MARA MATNR(品目コード) SPRAS(言語)、MAKTX(品目テキスト) 言語別の品目名称や説明を保持
MVKE MARA MATNR(品目コード) VKORG(販売組織)、VTWEG(流通チャネル) 販売組織/チャネル別の販売設定情報
MARC MARA MATNR(品目コード) WERKS(プラント) プラント単位の品目管理情報
MARD MARC MATNR、WERKS LGORT(保管場所) プラント内保管場所ごとの在庫情報
MLAN MARA MATNR(品目コード) ALAND(出荷国)、TAXM1(税分類) 国別の税分類と税コード設定
MARM MARA MATNR(品目コード) MEINH(代替数量単位)、UMREZ、UMREN 単位換算情報(例:1BOX = 12個など)
T179 MARA PRODH(品目階層) STUFE(階層レベル番号) 品目分類の階層構造(マーケ分析などに活用)

中心に位置するのはMARA(一般データ)であり、ここに登録された品目コード(MATNR)を基点として、業務用途ごとの詳細情報が各子テーブルに紐づく形で管理されています。

たとえば、MAKTはMARAとMATNRで接続され、品目名称を言語別に管理します。また、MVKEは販売組織や流通チャネルごとの販売条件を定義し、MARCはプラント単位の管理情報を保持します。さらに、MARCと連携するMARDでは、プラント内の保管場所ごとの在庫情報をより細かく扱うことが可能です。

一方、MLANは各国における品目の税区分、MARMは数量単位の換算情報、T179は品目分類の階層構造をそれぞれ担当しています。これらの情報はそれぞれの業務(販売・購買・在庫・税務・財務・分析)で活用され、部門間のデータ整合性を保ちながら業務を支える仕組みです。

このように、品目マスタは一見単純な品目情報であっても、実際には多層的かつ用途別に構成された複数のテーブルによって成り立っており、これらの関係性を正しく理解することがマスタ管理のポイントです。

まとめ

本記事では、SAPにおける品目マスタとは何か、構成する主要なテーブルの用途などについて解説しました。品目マスタの各テーブルは連携して機能しており、その関係性の正しい理解が求められます。

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