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事例から学ぶ ~ICTをどのように住民サービスに活用するか~

事例から学ぶ ~ICTをどのように住民サービスに活用するか~

平成28年1月に閣議決定された「Society 5.0(ソサエティ5.0)」のもと、国内では「IoT(Internet of Things)」や「ビッグデータ」「AI(Artifical Intelligence/人工知能)」「ロボット」等の新たな技術が次々と実用化されています。多くは産業分野においての実用化ですが、行政分野においても少しずつ実用化がみられるようになってきました。

 

地方自治体では、多様化・高度化する住民ニーズに応えるための施策として、ICTを活用した新たな取り組みに期待が高まっています。 

今回は、先進的な取り組みを行っている自治体の先例をご紹介します。

 

 

RPAを活用した窓口業務改革

熊本県宇城市では、それまで、市職員が行っていた窓口業務の一部を民間業者へアウトソージングするとともに、RPAで代替することで業務負担を大幅に削減しました。

 

対象業務は「ふるさと納税業務」「住民異動届」「職員給与」「会計審査・出納業務」の4つ。
たとえば、ふるさと納税業務では、寄附情報のダウンロード・アップロード(1日1回程度)や、メールの転送・印刷(銀行振込・郵便振替のみ)を自動化しました。実証実験では、年間で114万6,000円の歳出(人件費)削減が見込めるという試算結果が出されました。

 

ただ、RPA導入には初期費用がかかるため、費用対効果を上げるためには、長期的な運用を視野に入れ、複数業務での導入がカギになるといいます。

 

RPAの導入はほかにも多くの自治体で進められており、自治体におけるRPA導入の波がいままさに訪れているといえます。

 

■使用されているICT

・RPA…Robotic Process Automation(ロボティック プロセス オートメーション)。ロボットを使って業務を自動化すること。

【参考】宇城市 RPA等を活用した窓口業務改革事業
    (http://www.soumu.go.jp/main_content/000540331.pdf

 

 

介護分野のAI活用実証研究

愛知県豊橋市では、「お世話する介護」から「自立を促す介護」へのパラダイムシフト実現を目指し、「自立支援を促進するケアプラン」をAIに作成させ、ケアマネジャーの業務負担の軽減や、利用者のケアプランに対する満足度向上を図るための実証研究を実施しました。

 

本来、ケアプランを作成するケアマネジャー(人間)はプラン作成にあたり、食事やトイレ、入浴などの日常生活動作、買い物や食事、洗濯などの手段的日常生活動作の可能・不可能といった条件と、バイタルデータや活気など、高齢者から直接得た情報を経験知から複合的に判断します。AIは、これらの情報に加え、データ化された膨大な経験知から「このサービスを入れれば日常生活動作が改善する可能性が高い」といった判断を行い、ケアプランを作成します。

 

1人のケアマネジャーが経験できるケースの数は30件ほどのため、事業所ごとに蓄積できる経験知は「30×当該事業所のケアマネジャーの人数」となります。ここに、AIを導入することで、日本の全ケアマネジャー分(約8万5,000人)まで拡大するという構想です。

 

実証研究では、平成21年度から平成28年度までの10万6,297件、延べ介護保険利用者数3万1,461人分のデータをAIに学習させました。結果的に、AIが作成するケアプランは、現状のケアマネジャーが作成するものと近いプランが多かったようですが、AIによる精度の高い予後予測の裏付けにより、要介護者やその家族からのケアマネジャーやケアプランに対する信頼性が高まったという側面があります。

 

ただし、本実証研究に使用されるAIは、個人因子や環境因子という個別性が高いアセスメント項目については学んでいないため、ケアマネジャー(人間)と協力していくことが重要であるといいます。

 

■使用されているICT

・AI…人工知能。学習・推論・判断など人間の知能と同じ機能をもつコンピュータープログラムのこと。

【参考】AIによる自立支援型ケアマネジメントに関する調査研究及びセミナーの開催について
    (http://www.city.toyohashi.lg.jp/32780.htm

 

 

Uberの活用

京都府京丹後市では、自動車中心社会における移動を制約されてしまう「移動弱者(移動制約者)」を救済する目的で、Uber(ウーバー)とNPO法人「気張る!ふるさと丹後町」の協業により有償輸送「ささえ合い交通」を提供しています。

 

サービス内容は、運行対象区域を乗車は丹後町のみ、降車は京丹後市全体をとし、運賃体系は、最初の1.5kmまで480円、以遠は120円/kmを加算(おおむねタクシー料金の半額)となっており、年中無休で午前8時から午後8時まで利用できます。

 

ドライバーは、18人の地元住民が自家用車を使ってボランティアで担当しており、Uberの日本上陸当初、「白タク行為にあたり違法」と指摘された問題点をクリアしています。

 

運用から一年で平均利用回数は月60回を超え、スーパーや病院、役所などが集まる峰山町や網野町などへの日常的な用途に利用されているといいます。

 

見えてきた課題は「運行対象区域の拡大」。ささえ合い交通が「公共交通空白地有償運送(道路運送法施行規則第49条第1第2号)」の制度を利用している関係で、行きは「公共交通空白地域などで、バスやタクシーといった公共交通機関がない地域」という運用区域条件を満たせても、目的地の交通インフラにより条件に満たないことがあるため、帰りの利用ができない取り決めとなっているためです。今後、法整備など国との連携も求められそうです。

 ■使用されているICT

・Uber…ドライバーと乗客を結ぶ配車サービスのアプリケーション

【参考】5月26日は運行開始1周年-実績等をプレスリリース
    (http://kibaru-furusato-tango.org/blog/

 

 

国、民間企業、NPOなどとの連携が課題解決のカギに

ご紹介してきた事例からは、ICT活用による課題解決には、各自治体が単体で取り組む、もしくは先導するというよりも、ICTベンダーやNPOと協業する姿勢が見えてきます。

 

京都府京丹後市の「ささえ合い交通」のように、さらなる住民の利便性向上のためには法改正の検討が必要になるケースも出てくるでしょう。

 

総務省は、「ICT地域活性化ポータル(http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/local_support/ict/index.html」を運営し、全国の事例や地域情報通信振興支援施策などの情報提供を行っています。

 

こうした情報を収集しつつ、各自治体が抱える課題解決や住民ニーズを満たすためにどのICTが有効なのかという観点で、官界・民間を問わず対話し協業する必要がありそうです。

アイネスでは、地方自治体のさまざまなICT活用をご支援しています。
お気軽にご相談ください。

※記事の内容は、各自治体の発表時点での情報を基にしているため、その後の動向により変更となっている場合があります。

 

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