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BPR(業務改革)とは?進め方や手法をわかりやすく解説

BPR(業務改革)とは?進め方や手法をわかりやすく解説

BPRの進め方は、検討、分析、設計、実行、評価の順で行うのが一般的です。

デジタルトランスフォーメーション(DX)が進む現代において、業務プロセスを効率化し、生産性を向上させる手法として、BPRは重要視されています。新しいテクノロジーが登場することで、BPRの手法自体も進化しており、AIやデータ解析が取り入れられるケースも見られるようになりました。

本コラムでは、BPRの進め方や主な手法などについて、ご紹介いたします。

BPR(業務改革)とは

BPR(Business Process Reengineering/業務改革)とは、業務プロセスを根本から見直し、劇的な改善を目指す手法です。

単なる業務の効率化を超えて、業務そのものを変革することを目的としています。効率化やコスト削減はもちろん、業績向上や顧客満足度の向上を実現するために用いられます。
業務フローを始め、情報システムや組織、職務、管理機構などが、見直しの対象となります。

BPRは、マサチューセッツ工科大学の教授だったマイケル・ハマー(Michael Hammer)と、経営コンサルタントのジェイムス・チャンピー(James A. Champy)の著書「Reengineering the Corporation: A Manifesto for Business Revolution(リエンジニアリング革命)」のベストセラー化により、広まったとされています。

業務改革と業務改善の違い

業務改革(BPR)と業務改善は、しばしば混同されがちですが、根本的に異なる概念です。
業務改善は、既存の業務プロセスを少しずつ改善していくアプローチです。既存の業務プロセスをスムーズにするための調整や改善を行います。
一方で、業務改革(BPR)は、業務プロセス自体を根本から見直し、大幅な改善、もしくは全く新しい方法で業務を行うことを目指します。

業務改善は、既存のフレームワーク内での最適化を目指すため、改善の幅は限られています。しかし、BPRはその制約を取り払い、業務プロセスそのものを変えることで、より大きな効果を狙います。この点が、最も大きな違いといえるでしょう。

情報システム部の担当者にとって、この違いを理解することは非常に重要です。なぜなら、業務改革(BPR)は、ITシステムの導入や改善が伴うケースが多いからです。業務改善が「現状の業務をより良くする」のに対し、業務改革は「新しい業務を創る」ことが多いです。
自社の課題を解決するには、どちらのアプローチが適しているのかを理解することが、成功への第一歩となるでしょう。

BPR(業務改革)の進め方

一般的に、BPR(業務改革)の進め方は、次の5つのステップを踏みます。

1.検討

最初に、何を目的としてBPR(業務改革)を行うのかを明確にします。目的が不明瞭だと、プロジェクトが中途半端に終わる可能性が高くなるためです。目的を明確にした上で、どの業務プロセスが改革の対象となるのか、その業務範囲を決定します。取り組みの優先順位も決めておきましょう。

この段階では、上層部ともコミュニケーションを取り、全体の方向性を確認することが重要です。

目的を設定したら、それに基づいて具体的な目標を設定します。
さらに、全社的な協力を得るために、説明会などを実施して目的・目標を周知してください。質疑応答の場を設け、丁寧に落とし込みましょう。

2.分析

次に、現状の業務プロセスを詳細に分析します。
どの業務がどれだけの時間とリソースを消費しているのか、効率が悪い業務は何か、どの業務が顧客満足度に寄与していないのかなどを、現場の担当者へのヒアリングや、データに基づいて調査します。

ABC分析、プロセスマッピング、ベンチマーキング、BSC(バランススコアカード)などのフレームワークを活用すると良いでしょう。
この分析によって、改革の方向性がより明確になるはずです。

3.設計

分析結果を基に、新しい業務プロセスの戦略・方針を決め、設計を行います。
この時、業務の流れだけでなく、それに伴う人員配置や必要なシステム、ツールも考慮してください。
また、全社的な視点で業務プロセスを見直すことが重要です。

設計が終わったら、これを元に具体的な実行計画を作成します。

4.実行

設計した業務プロセスに基づいて、実際に業務改革を行います。
このステップが最も時間と労力がかかる部分です。計画通りに進めるためには、十分なリソースが必要です。
さらに、計画通りに進んでいるかどうかを常にモニタリングし、必要な調整を行います。

5.評価

最後に、BPR(業務改革)が目的と目標に沿ったものになったかどうかを評価します。
この評価では、改革後の業務プロセスがどれだけ効率化されたか、目標に対してどれだけ達成できたかなど、数値でしっかりと測る必要があります。定性的なデータを取るために、現場の担当者へのヒアリングも実施しましょう。

目標に対してどれだけ達成できたのかを検証し、必要な場合は再度改善活動を行います。

情報システム部の担当者にとって、この進め方の各ステップで何をすべきかを理解しておくことが、BPRを成功させるために非常に重要です。特に「分析」では、ITの力を最大限に活用してデータを収集し、その解析結果を元に「設計」を行いましょう。

BPR(業務改革)を進める主な手法

BPRを進めるのに、いくつかの手法が存在します。
以下に主要なものをピックアップしてご紹介します。

業務仕分け

「業務仕分け」はBPR(業務改革)の初期段階で行われる一手法で、業務プロセスを詳細に分析し、その各要素を分類・評価する作業です。業務仕分けにより、業務の効率化や生産性向上が可能な部分と、不必要な業務または外部に委託可能な業務を明確に線引きします。

業務仕分けの主なステップは以下の通りです。

1.業務のリストアップ:まず、組織内で行われている全ての業務をリストアップします。

2.業務の分類:次に、それらの業務をいくつかのカテゴリに分類します。たとえば、「コア業務」「サポート業務」「戦略業務」といった具合です。

3.業務の評価:各業務が組織の目標にどれだけ貢献しているか、コストパフォーマンスはどうかなどを一つひとつ評価します。

4.優先度の決定:評価に基づき、どの業務に優先的にリソースを配分するべきかを決定します。

5.改善・削減・委託の検討:最後に、不必要な業務の削減、効率化が可能な業務の改善、外部に委託可能な業務のアウトソーシングなどを検討します。

このようにして、業務仕分けによって、組織全体の業務プロセスを効率的に整理し、より集中的に価値を生み出す活動にリソースを集中させるための土台を作ることができます。
特に、情報システム部の担当者にとっては、この業務仕分けを通じてITリソースの最適化も行えるため、非常に重要なプロセスといえるでしょう。

ERP(基盤システム)の導入

ERP(Enterprise Resource Planning)とは、企業のさまざまな業務を一元管理するシステムのことです。ERPを導入することで、業務プロセスの効率化を図ることができます。

ERPの導入は大規模なプロジェクトとなることが多く、その成功・失敗が企業の運命を左右する場合もあります。導入に際しては、まず何を目的とするのか明確にし、それに適した製品を選ぶ必要があります。

また、全社的な業務プロセスの見直しも同時に行い、ERPによって最大限の効果を引き出すようにしましょう。
ERPを導入したからといって自動的にBPRが成功するわけではない点に、注意が必要です。

シェアードサービス

「シェアードサービス」とは、企業内で共通して行われる業務機能(例:人事、経理、ITサポートなど)を一つの専門部門やセンターに集約する手法です。社内に専門の部署を設置することもあれば、外部サービスを利用することもあります。

シェアードサービスを導入する際のポイントは、どの業務を集約するかという選定作業です。一般的には、ルーチンワークが多く、専門性が低い業務から始めることが多いです。
シェアードサービスの導入で、効率化を図りながら専門スキルを高め、コスト削減が期待できます。

しかし、集約によって、業務の「現場」となる部門との距離が生まれる可能性もあり、コミュニケーションが取りづらくなる場合があります。
また、社外へアウトソーシングする場合は、かえってコストがかかる可能性もあります。
こうしたデメリットも踏まえながら、導入・運用には十分な検討と計画が必要で、失敗すると逆に効率が落ちる可能性もあります。

シックスシグマ

BPR(業務改革)における「シックスシグマ」とは、品質改善と業務プロセスの効率化を目的とする手法の一つです。統計学的な手法を用いて、プロセスにおける変動(バリエーション)を最小限に抑え、品質を一定以上に保つことを目指します。

もともと、製造業で用いられることが多かった手法ですが、最近ではサービス業や公共機関などでも導入が進んでいます。

シックスシグマの特長は、業務プロセスを科学的に分析し、データに基づいて改善を行う点です。エラーや無駄を削減することで、製品やサービスの品質を向上したり、コストを削減したりといったメリットが期待できます。改善の効果が数値で明確にされるため、経営層が納得しやすいというメリットもあります。

一方で、シックスシグマは、統計学的な手法を多用するため、専門的な知識とスキルが必要ですし、専門のツールが必要なため、導入費用がかかります。

BPO

Business Process Outsourcing(BPO)とは、非主力業務を外部に委託することで、業務の効率化とコスト削減を目指す手法です。企業が、より効率的に業務を遂行し、コストを削減するための一つの戦略です。

たとえば、顧客対応のコールセンター業務を外部の専門企業に委託する、コールセンター業務を外部の専門企業に委託する、ソフトウェア開発やシステム管理、ネットワーク管理などを外部のIT企業に任せるといった例が挙げられます。

BPOは、特に人件費が高い国でよく用いられる手法で、業務を低コストの地域や企業に委託することで、大幅なコスト削減が可能です。

ただし、品質管理やセキュリティ面でのリスクもあるため、委託先の選定には最大限の注意が必要です。

SCM

SCM(Supply Chain Management/サプライチェーンマネジメント)は、供給業務全体を効率よく管理するための手法で、原材料の調達から製造、在庫管理、流通、販売、そしてアフターサービスに至るまで、サプライチェーン全体を最適化することを目的としています。
SCMの導入により、在庫コストの削減や納期の短縮が期待できます。

SCMをBPRの一環として導入する場合、プロセスの統合について考慮する必要があります。SCMは多くの場合、複数の部門や企業が関与する複雑なプロセスとなるため、これを効率的に管理するためには、情報共有やプロセスの統合が必要になるのです。

サプライチェーンマネジメントについては、下記の記事もご覧ください。

【関連記事】
サプライチェーンに潜むリスクと防御の方法

以上の6つの手法は、それぞれが独立しているわけではなく、多くの場合、連携して用いられます。たとえば、業務仕分けで不必要な業務を削減した後にERPを導入する、といった具合です。
情報システム部の担当者は、これらの手法を組み合わせて最適なBPRを設計する必要があります。

まとめ

BPRは、企業や公共団体が直面する業務効率や生産性に関する課題を解決するための有効な手段の一つです。

しかし、その成功には明確な目的設定や計画的な進行が必要です。
BPRは一度きりのプロジェクトではなく、継続的な取り組みが必要です。この記事などを参考にしながら、持続可能な業務改革を目指してください。

特に、情報システム部門は、テクノロジーを駆使して業務プロセスを効率化する役割を担っています。そうした知識を活かしながらBPRを成功に向けて牽引することが期待されます。

BPRは全社的な取り組みであり、各部署やステークホルダーとの連携も非常に重要です。部門の垣根を越えてコミュニケーションを取り、全体最適を目指す必要があるでしょう。

※ 本文に掲載されている会社名・団体名および製品名は各社または団体等の商標または登録商標です。

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