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MDMツールの選び方:失敗しないための「3つの比較ポイント」
前回は、DX推進を阻む「データのサイロ化」のリスクと、それを解決するためのMDM(マスタデータ管理)の重要性について解説しました。
「自社でもMDMを導入して、データガバナンスを強化したい」 そう考えた時、次に直面するのが「ツール選定」という高い壁です。
市場には多機能なグローバル製品から特定の業界に特化した製品まで数多くのMDMツールが存在しますが、「高機能なツールを導入したのに、結局現場で使われずプロジェクトが頓挫した」という失敗事例は後を絶ちません 。実は、「機能比較表(○×表)」だけで選んでしまうことが、失敗の最大の原因になり得るのです。
連載第3回となる今回は、MDMツール選定で陥りがちな落とし穴と、導入の失敗を防ぐための「3つの比較ポイント(評価軸)」について解説します 。現場での使いやすさや、日本特有の商習慣への適合、そして既存ERPとのシステム連携など、本当に見るべき視点をお伝えします。
システム選定の際、多くの企業が「機能比較表(○×表)」を作成します。
「機能Aはあるか?」「機能Bはあるか?」とチェックをつけ、○が多い製品=良い製品、と判断しがちです。
しかし、MDMにおいてこの選び方は非常に危険です。
なぜなら、MDMの成否を決めるのは「機能の多さ」ではなく、「現場への定着率」だからです。
MDMは、営業担当者や人事担当者など、必ずしもITスキルが高くない社員が日常的に利用します。どんなに高度な名寄せエンジンを搭載していても、画面が複雑で操作が難しければ、現場は入力を後回しにします。
その結果、データは鮮度を失い、システムは形骸化し、再び「データのサイロ化」へと逆戻りしてしまうのです。
失敗しない選定のためには、スペック表には現れにくい「運用視点」を持つことが不可欠です。
最初のポイントは、ユーザーインターフェース(UI)、つまり「画面の使いやすさ」です。
グローバル展開されている大規模なMDM製品は非常に高機能ですが、その反面、設定画面が複雑で、専門のエンジニアでなければ扱えないケースが少なくありません。
一方、現場が求めているのは、「直感的に入力できる画面」や「ミスを未然に防ぐ入力補助機能」です。
現場の負荷を下げるUIこそが、高品質なデータ(ゴールデンレコード)を維持するための第一防壁となります。
2つ目のポイントは、「日本の業務プロセスに合っているか」という点です。
日本企業には、欧米のシステム思想ではカバーしきれない独自の商習慣が存在します。
例えば、以下のようなケースです。
・複雑な組織構造と人事異動:
日本企業では、4月や10月に大規模な組織変更が行われます。MDMは、新旧の組織図を管理し、然るべきタイミングで切り替える機能が求められます。
・兼務や出向への対応:
「A部長は、B社の役員も兼務している」といった複雑な所属情報の管理。
・承認ワークフロー:
マスタデータの登録・変更には、申請→承認→決裁という厳格なワークフローが必要です。
海外製のパッケージ製品では、こうした日本特有の要件に対応するために、多額のカスタマイズ費用(アドオン開発費)がかかる場合があります。
標準機能で日本の商習慣(複雑な組織管理やワークフロー)に対応できるかは、コストと導入スピードを左右する重要な要素です。
3つ目のポイントは、「システム連携(コネクティビティ)」です。
第2回でお伝えした通り、MDMの役割は「ハブ(中核)」となり、正しいデータを各システムへ配信することです。
そのため、貴社が現在利用している基幹システム(ERP)やSFAと、スムーズに連携できなければ意味がありません。
特に、SAPなどの大規模ERPを利用している場合、連携インターフェースの開発をゼロから行うと、膨大なコストと期間がかかります。
「つなぐこと」を前提とした拡張性の高いツールを選ぶことが、将来のDX推進をスムーズにします。
今回は、MDM選定で失敗しないための「3つの視点」について解説しました。
| 選定の視点 | 重要な理由 |
|---|---|
| ① 操作性(UI) | 現場が直感的に使えなければ、データは更新されず陳腐化するため。 |
| ② 適合性(商習慣) | 日本特有の組織変更やワークフローに対応できないと、運用が回らないため。 |
| ③ 拡張性(連携) | SAPなどの基幹システムとスムーズにつながらなければ、ハブとして機能しないため。 |
これら3つの条件をすべて満たす製品を見つけることは、簡単ではありません。
「海外製は連携に強いが、日本のワークフローに弱い」「国産ツールは使いやすいが、大規模ERPとの連携実績が少ない」といったジレンマに悩む担当者様も多いでしょう。
しかし、日本企業の複雑な商習慣にフィットしつつ、SAP等のグローバルERPとも強力に連携できるMDMが存在します。
最終回となる次回は、これらの課題を解決し、日本企業のDXを加速させる具体的なソリューションについて、その特徴と導入効果を解説します。
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