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2019/11/20

SAPの運用変革 S/4HANA対策とマスター革命セミナーレポート

SAPの運用変革 S/4HANA対策とマスター革命セミナーレポート

2025年でSAPが「SAP ERP」や「SAP Business Suite」の保守を終了してしまう「2025年問題」については、このサイトでも何度か取り上げてきましたが、それが6年後に迫り、SAPユーザーはいよいよ具体的な対策に取り組まなければならない状況です。

こうした背景を受け、アイネスでは2019年7月25日(木)・26日(金)にセミナー「SAPの運用変革 S/4HANA対策とマスター革命」を開催しました。

本記事では、当日の講演内容からポイントを絞ってご紹介します。

1.「SAP S/4HANAへの移行のポイント ~アプリケーション編~」

セッション1「SAP S/4HANAへの移行のポイント ~アプリケーション編~」

【講師・会社紹介】
ビジネスエンジニアリング株式会社
ソリューション事業本部 エンタプライズソリューション本部長 佐野 隆之氏
1987年に東洋エンジニアリング株式会社の一部門としてビジネス開始。1991年に日本発のSAPパートナーとしてSAP JAPANの設立以前よりERPビジネスをスタート。20以上年SAP事業を行う。SAP AWARDを15回以上受賞。「ビーエンジ」の愛称で親しまれている。

冒頭で、経済産業省がSAP2025年問題に関連し、2018年秋にデジタル・トランスフォーメーション(DX)の必要性について発表した内容が紹介され、既存システムのブラックボックス化の解消やデータ活用ができていないと、システムの維持管理費が高額化し、IT予算の9割以上に達する点に言及しました。
そのうえで、SAP S/4HANAへの移行のポイントが解説されました。

佐野氏はまず、次の3つの観点からそれぞれS/4HANAへの移行方針を選択する必要があると述べ、それぞれの選択肢が示されました。

①既存のSAP ERPからどのように移行するのか
 →S/4HANAで新たに再構築
 →S/4HANAへコンバージョン

②S/4HANAのライセンス形態をどのようにするのか
 →Own Licenseで契約
 →Subscriptionで契約

③S/4HANAの今後のインフラをどのようにするのか
 →自社調達のWH上に構築
 →AWSやAzureなどのIaaS上に構築
 →SAP HANA Enterprise Cloud上に構築
 →S/4HANA Cloudを採用

このなかから、特に①の「S/4HANAへコンバージョン」と、③の「S/4HANA Cloudを採用」について詳しく解説が行われました。

1-1.SAP S/4HANAコンバージョンのポイント

SAP S/4HANAへコンバージョンのポイントとしては、準備段階が重要であるといいます。

S/4HANAへコンバージョンする場合、グローバルインスタンス統合や、新業務プロセス策定(アドオン排除)などの制約によりシステム・コンバージョン不可なケースがあること、既存SAP ERPに業務要件への対応や日常運用で特段の問題がない場合であっても、基本的な制約によりシステム・コンバージョンができないケースがあると注意喚起がなされました。

準備に際しては、段階に応じたツールを使って準備を行うことが大切で、SAP社提供のMaintenance Planner、SI-Chescなどを利用してReadiness Checkのうえ、最終的には「POC」の実施が必要だと強調しました。

1-2.SAP S/4HANA Public Cloudの選択

佐野氏によれば、日本でもS/4HANA Public Cloudの導入が進んでおり、システム運用・保守に工数をさけない、または標準化を進めつつ積極的・継続的に先進機能のメリットを享受する方向性が強い場合に、SAP S/4HANA Public Cloudが選択肢となるといいます。

S/4HANA Public Cloudの導入では、「Fit to Standard(略称:F2S)」という思想に基づき、SAPから提供されているビジネスシナリオ(SAP BEST PRACTICE)から自社業務に合致するシナリオを選定したうえで、シナリオを有効化し、設定(組織設定や、シナリオ内に定義される範囲のオプション処理に伴う設定)を実施することが推奨されました。

同社では、S/4HANAのアセスメントに関するサービスを提供しているといい、インフラおよびSAPベーシスに専門的知見を有するBeeXと、アプリケーションの機能に知見を有するB-EN-G(ビーエンジ)が一体となって、基幹システム周辺領域も含めた検討を行い、企業のSAP S/4HANAコンバージョン計画立案を支援しているそう。

3段階(ロードマップ、アセスメント、最終計画作成)に分けて個別の提供が可能であり、インフラ・ベーシス・アプリケーション領域一体型のサービスであるという同サービスの特長を紹介して、セッションは終了しました。

2.「企業課題の解決をもたらすマスターデータ管理の最適解」

スマート自治体が求められるようになった背景

【講師・会社紹介】
株式会社アイネス ITソリューション本部 開発第一部 吉田 徳行
1964年に株式会社協栄計算センターとして協栄生命保険株式会社(現ジブラルタ生命株式会社)より独立。1995年にSAPに関するコンサル事業をSAP Partner(現Silver Partner)として開始。2008年にはSAPマスター管理ツール「Aerps MASTER」をリリースし、2018年からはS/4HANAに対応をした「Aerps MASTER Ace」も販売を開始する。

2-1.管理が難しいSAPデータ

吉田氏によれば、「外部コストや工数がかかりすぎる」「マスターデータの品質が悪い」「マスターメンテナンスが面倒」「操作性に不満が多い」など、SAPを導入してマスターデータの管理がうまくいかず困っているシステム担当者は多いといいます。

その理由として、下記の3点が挙げられました。
・操作が大変:マスター項目が多い(汎用性確保のため)ためユーザー習熟が困難・管理が属人化。
・整合性の確保が難しい:業務上「正しい」値を入力する必要がある
・仮登録や承認ができない:複数の部門・担当者で処理を行う前提で設計されていない→業務の流れと合っていない。

2-2.SAP マスター管理の問題点

このため、多くの企業はExcelで運用しているといいます。

【Excelでの運用フロー】
・各部門にてExcelシートを入力し、回覧する
・システム部がシート内容のチェックを行う(問題があれば差し戻す)
・簡易登録ツールを使用し、SAPに登録する

しかし、Excelでの運用は、「入力ミス」「受け渡しの手間」「記録保管の手間」「進捗状況不明」「リードタイムが長い」「システム部の負担大」などの問題があり、限界があると指摘しました。

2-3.問題点解決のポイント

吉田氏は、この問題解決のポイントを、以下の3点に集約しました。

・操作が大変:ユーザーフレンドリーな「操作性」が必要
・整合性の確保が難しい:整合性の取れたデータを作成するための「チェック」機能が必要
・仮登録や承認ができない:業務の流れに合わせた「ワークフロー」の導入

これらをすべて解決するツールとして提案されたのが「Aerps MASTER」です。同サービスは、「操作性」「チェック」「ワークフロー」の3つを兼ね備えたSAPに特化したマスター管理ツールで、ユーザーが複雑なSAPの画面を見なくてもWeb画面からデータを入力し、SAPのデータを入力・更新できるという特長を持っています。

【Aerps MASTERの対象マスター】
品目マスターを中心に、生産系、購買系、販売系のマスターまで幅広く対応。ほかにも要件に応じて拡張可能。

【Aerps MASTERの導入効果】
・操作性:生産性向上、属人化解消
・チェック機能:マスター精度向上
・ワークフロー機能:リードタイム短縮、内部統制強化

最後にAerps MASTERの画面操作デモンストレーションが行われ、セッションは終了しました。

3.「現場の業務効率をUP! SAP/ERPの情報活用基盤構築の秘訣をお教えします!」

【講師・会社紹介】
株式会社ユニリタ 営業本部 パートナービジネス部 水原 正氏
メインフレームのデータベースを取り扱ってきたノウハウを活かし、周辺ミドルウェアの開発を手がけるパッケージベンダー。データ活用やジョブ管理、帳票、運用に関連する製品を中心に、アプリケーション、コンサルティングも提供。

3-1.SAP/ERPの情報活用の課題

水原氏によれば、SAP/ERPの情報活用には、次の4つの課題があるといいます。

①データを取得するためにABAPやクエリ、外部プログラム等開発が必要なため、情報を提供するために期間や工数がかかる。
②分析やレポート、帳票作成のためにはSAP以外のデータも必要になることも多く、データ加工や統合等さらに工数がかかってしまう。
③SAPの帳票機能では必要なレポートや帳票が作成できず、現場がExcelを使って手作業でレポート作成し、現場の負担や残業が問題に。
④そもそもSAPマスターの整備がされておらず、質の悪いデータでは情報活用の効果が薄い。

これらに対する解決策として、ユニリタの「SAP/ERP情報活用ソリューション」とアイネスの「Aerps MASTER」を組み合わせた活用が紹介されました。

3-2.ユニリタのSAP/ERP情報活用ソリューション

ユニリタのSAP/ERP情報活用ソリューションは、「データ集計・加工」「レポーティング」の大きく2つの機能を持ち、これらを活用することで、以下の3点を実現できるといいます。

・ノンプログラミングで、開発環境でSAPのデータ抽出、加工などを短期間、低工数でビジネスの現場に必要な情報活用をタイムリーに提供できるようになる。
・ほかの基幹システムやアプリケーション、Excelファイルなど、社内外のさまざまなデータを扱えるようになり、精度の高い情報活用を実現できる。
・経営会議の報告資料や販売実績レポートを簡単に作成できるため、働き方改革につながる。

ここで、実際のソリューション事例が3件紹介され、同サービスの有効性を裏付けました。
最後に、同サービスの4つの特長「操作性がシンプルですぐに使える」「大量データを高速処理できる」「細かいデータ加工要求に対応できる」「セキュアな加工処理(個人情報・マイナンバーのマスキング)」が紹介され、セッションは終了しました。

4.「現場の業務効率をUP! SAP BASIS運用作業をサービス利用で煩わしさを解消!」

セッション4「現場の業務効率をUP!SAP BASIS運用サービスのメニュー化~煩わしいBASIS運用作業をサービス利用へ~」

【講師紹介】
株式会社アイネス ITソリューション本部 運用サービス 第一部 藤野 義次

藤野氏は冒頭で、世界のERP市場のトップシェアを誇るSAP社(市場規模の6%)のERP製品が、企業の重要な情報を管理し、活用するためのインフラとして機能していること、ビジネスを円滑に進めるための仕組みとして大きな成果を上げている点について言及しました。

しかし、運用面のハードルが高いのがSAPソリューションのネックだといいます。

4-1.SAP運用の問題点

具体的な問題点について、SAP導入後のシステムを自社にとって快適なものとするためには、

①機能修正・追加およびカスタマイズによる継続的な保守
②SAP BASISおよびITインフラ基盤における安定運用

の2つが必須となる点が挙げられました。

これらを実現するためには、SAPソリューションとは異なる知識やノウハウが必要で、特に②を最適化できないと、コストコントロールが難しくなり、コストが高止まりする原因となりやすいことが大きなネックとなっているそう。

つまり、アプリケーションを支えるミドルウェアに当たるSAP NetWeaver(SAP BASIS)の運用が重要になるが、SAP BASISの運用作業の代表的な項目だけで「SAPインスタンス起動/停止」「SAPユーザー管理」など16もの項目があり、なかでも「移送管理」の運用コストが高いこと。
また、移送作業は機能追加・修正の都度発生し、SAPのバージョンアップでも発生するため、定時後の対応になりがちで拘束時間も長いこと。
さらに、SAP BASIS運用には専門スキルが必要で代替要員を育成しにくく、運用が属人化しやすいため作業負担が大きく、時間外労働の上限規制を守れないといった労働環境面での問題点も指摘されました。

加えて、要員確保も以下のような理由から容易ではないといいます。

・新たにSAP BASIS運用要員を追加したい場合、費用の純増になる。
・一から育成しようとした場合、研修費が高額で期間も長くなる。
・代替要員が必要な場合、BASIS技術者は市場的に不足しており手配は容易ではない。

こうした問題点はSAP運用全体のリスクとなり得る、と藤野氏は指摘します。

4-2.BASIS運用サービスとは

こうした課題の解決策として提案されたのが、同社のSAP BASISサービスです。
同サービスは、SAP BASIS運用をリモートで代行するというもので、同社が長年にわたり蓄積してきたBASIS運用の経験とノウハウを全36種類にメニュー化しているといいます。

【サービスの特長】
①煩わしいBASIS運用作業をサービス利用へ
②スピーディーかつ段階的な検討が可能
③BASIS運用コストの見える化と改善が可能

同サービスを活用すれは、SAP BASISの運用だけではなく、OSやデータベース、ネットワーク、セキュリティ、クラウドなどのITインフラ基盤の統合的な運用支援が可能になるといいます。

最後に、システムやベンダーごとに、標準化されていないバラバラな運用をそのまま引き継ぐと個別運用が増え、その分、運用が煩雑化し、いびつな運用になっていくという問題点と、運用標準化の方針(運用基準・基本ルール、運用標準化、受け入れ用のガイドライン・チェックシート、手順書作成のガイドライン)を策定し、運用の煩雑化を避けることの重要性を強調し、セッションは終了しました。

今回、ご紹介しましたセミナー内容や各製品について、より詳しい内容をお知りになりたい方は、下記からお問い合わせください。

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アイネス


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