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いまさら聞けないAPIエコノミーとは

いまさら聞けないAPIエコノミーとは

かつてはプログラマーの間でのみ使われてきた「API」というワードが、近年「APIエコノミー(経済圏)」「API公開(オープンAPI)」といったかたちでビジネス界で頻繁に使われるようになってきました。

今回は、「APIエコノミー」を取り上げ、基本的な意味から事例、今後の可能性まで解説します。

1.APIエコノミーとは?

まず、APIとは、Application Programming Interfaceの頭文字を取ったもので、プログラムを連携させる仕組みのことです。APIにはさまざまな種類がありますが、近年ではAPIといえばWeb APIを指すケースが多いです。

たとえば、企業サイトなどさまざまなWebサイト上でGoogleマップが埋め込まれているのを見かけますが、これはGoogleマップがAPIを公開しているために可能となっています。また、ユーザーインタフェースには表れていないケースもあり、「Pokemon GO」の地図情報でも2017年末までGoogleマップを利用していました。

このような地図機能を自社で1から構築するのは費用も時間もかさみます。APIを利用することでそれらを圧縮することができます。APIには、無料で利用できるもの、有料で利用できるもの(一定量までは無料のものを含む)、利用のうえ送客すると成果報酬が得られるものがあります。

また、APIを公開する側はユーザー数アップが見込めます。つまり、API公開によって双方が経済的なメリットを得るのです。さらに、ユーザーも利便性を享受できます。このようにして生まれた新たな経済圏をAPIエコノミーとよびます。

2.APIエコノミーが注目される理由

API自体は以前から存在していたにも関わらず、ここ数年で注目を浴びるようになってきたのは、なぜでしょうか。

その理由は、ユーザーのWebサービス利用環境の変化にあります。インターネットが高速化してWi-Fiが普及して常時接続が当たり前になったことやスマートフォンの普及、クラウドサービスが充実したことでWebサービスとの接点が増加し、企業は新たなWebサービスや機能をよりスピーディーに提供しなくてはならなくなりました。もちろん、低コストで高品質であることも求められます。

こうしたビジネス環境の変化をキャッチアップし、イノベーションを生み出すためにAPIエコノミーは大きな役割を担います。米IBMの試算では、APIエコノミーによる2018年の経済効果は2兆2,000億ドル(約250兆円) と予測されていました。

しかし2020年になった現在、250兆円といったAPIエコノミーの経済効果について大きく報道されてはいません。APIエコノミーは、表立っては見えてきていませんが、実は知らぬ間に広がりつつあるのではないでしょうか?

3.身近にあるAPIエコノミー

なぜ「知らぬ間に」広がっていくのか、既に活用されているAPIエコノミーの事例を2つご紹介します。

3-1.エクスペディア

エクスペディアグループが展開する旅行サイト「エクスペディア」はExpedia Affiliate Network(EAN)というAPIを公開しています。EANを利用したWebサイトからの送客があるたびに、エクスペディアから成功報酬が支払われるというアフィリエイト方式を採用。エクスペディアの売上の9割がこのEANからのものだといいます。 エクスペディアの2017年の売上高は100億米ドル超なので、90億米ドル以上がAPIエコノミーによる効果ということになります。Expedia Affiliate Networkの歩合は不明なものの、アクティブアフィリエイターは数千といわれており、波及効果は大きいといえます。

3-2.Uber(ウーバー)

Uberは、Webサイトとアプリを使ってライドシェアを実現するサービスですが、配車のための地図情報、運転手と利用者がコミュニケーションを取るための機能、決済機能のそれぞれを外部APIの利用によりまかなっています。

・地図情報…Googleマップ
・連絡手段…twilio
・決済機能…Braintree

Uberの2018年の売上高は113億米ドル。
Uberはさらに、ユーザーがボタン一つで配車できる自社API「Uber API」も公開しており、国際的なホテルグループであるHyatt Hotels & Resortsのアプリなどに機能追加されています。ホテル側にも宿泊客の利便性向上というメリットがあります。

エクスペディア同様、APIを通じた初回利用者があると成功報酬を支払うアフィリエイト方式となっています。このように、APIを通じてサービスは広がってきているのです。

4.これからAPIエコノミーが広がる分野

APIエコノミーが進んでいるのは欧米ですが、その欧米では金融業界におけるAPIエコノミーが先行しています。日本では、2017年5月の銀行法改正で、銀行に対してAPI公開が努力義務として課されました。

利用者から見た銀行との接点は、かつては窓口のみでしたがテレフォンバンキング、インターネットバンキングへと選択肢が増え利便性が向上してきました。今後はここにAPIという接点が増えるイメージです。

残高照会、振込、決済、為替レート参照といった金融サービスをAPIを通じて企業に開放することで、銀行単体では実現し得なかった新しいサービス(FinTech)が実現する可能性があります。仮に、APIを経由せずアプリなどでFinTechを提供する場合、金融機関のインターネットバンキングにログインするためのアカウント情報をアプリに登録する必要があり、セキュリティリスクが生じます。APIの利用により、個人認証のためのトークンをアプリに発行することで、アカウント情報をはじめとする個人情報をアプリ内に保持させずに金融サービスを呼び出すことができ、よりセキュアに提供が可能となります。

たとえば、複数の銀行口座やクレジットカード利用状況、ポイントサービスなどの明細を一元管理できる個人資産管理サービス「Moneytree(マネーツリー)」は、API経由で銀行口座情報にアクセスしています。さらに、業務ソフト「弥生シリーズ」と資産管理アプリ「Moneytree(マネーツリー)」が連携することで「Moneytree」が対応している全国1,300以上の金融機関などの取引データを「弥生シリーズ」に取り込めるようになり、日々のお金の管理から確定申告までがカバーできるようになりました。

もう一つ、APIエコノミーの可能性が秘められているのが医療分野です。すでに、株式会社日本医療データセンターが健康診断結果などの医療データを分析して算出した各個人の健康年齢を生命保険会社などに提供するサービスをAPI経由で行っています。
今後、同様のサービスを開発する企業も出てくるでしょうし、さらにフィットネスジムをはじめとするさまざまな健康増進ビジネスとの連携も考えられます。

5.まとめ

事例でもご紹介した金融業界では少し前まで、銀行などのメガバンクとFinTechベンチャーの競合が懸念されていましたが、いまやAPIを通した協業が現実のものとなっています。今後はさらに、業界の垣根を超えたAPI連携によるAPIエコノミーのさらなる効果が期待されています。

API公開には、セキュリティや公開後のメンテナンスなどクリアしなければならないハードルがいくつもありますが、顧客の期待値がますます高まるなか、競合サービスとの差別化を図るためにも、他社との協業を検討する必要があるかもしれません。

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