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「AI」と聞くと、少し前までは近未来的なロボットをイメージしていた方も少なくないでしょう。しかし、お掃除ロボットやスマートスピーカーなど、今やAIは私たちの暮らしの中でAIは身近なものとなり、ビジネスにおいても人手を省力化してくれるなど、活用が広がっています。
今回は、ビジネスの中でも、とりわけ小売業において、AIがどのように活用されているのか、現在の姿と未来についてご紹介いたします。
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AIとは、Artificial Intelligenceの頭文字を取ったものです。日本語では「人工知能」と訳されます。明確な定義は定まっていないものの、一般的には、人間が行うような言語の理解や推論、学習、問題解決といった創造的・知的行動を実現できる技術を指します。
将来的に、AIの進化が進むと、自らプログラミングを行って自己成長し、人間の知能を超える「シンギュラリティ(singularity/技術的特異点)」が起きることを懸念する専門家も多いですが、現時点では、業務におけるビッグデータの解析、定型業務の代行、識別と判断が得意分野となっています。
小売業界におけるAI活用の事例を6つ、ご紹介いたします。
岡山県を中心に、鳥取県や島根県にスーパーマーケットを出店する株式会社マルイでは、社内に蓄積されている過去の入荷・販売データやキャンペーン情報と、外部データである気象情報を組み合わせ、AIを活用して鍋に使われる食材7品目の需要予測に取り組みました。
PoC(Proof of concept/概念実証)では、全25店舗中9店舗で約130万円の削減効果あったといいます。
「省人化」「省力化」を軸にソリューションを提供する株式会社TOUCH TO GOは、2020年3月に高輪ゲートウェイ駅に無人AI決済店舗「TOUCH TO GO」をオープンしました。
同店舗は、ウォークスルー型の完全キャッシュレス店舗で、来店客は、商品を持って出口へ進み、タッチパネルの表示内容を確認して支払いをするだけで買い物ができます。
天井などに無数に設置されたカメラ映像をAIが認識します。来店客と、手に取った商品をリアルタイムに認識することで、来店客が決済エリアに立つとタッチパネルに商品と購入金額を表示するという仕組みになっています。
関東・東京地方を中心に総合スーパーを展開する株式会社イトーヨーカ堂では、2020年9月から全国の店舗にAIを使った商品発注のシステムを導入・運用しています。対象商品は、加工食品や冷凍食品、アイス、牛乳など約8,000品目で、価格や商品陳列の列数、曜日特性や客数などといった社内に蓄積されたデータに、天候情報を加えて分析。
2018年春から実施のテスト店舗では、店舗担当者が発注作業にかける時間を平均で約3割も短縮できたといいます。また、営業時間中に在庫がなくなる販売機会のロスを削減でき、適正な在庫数量の確保につながる成果が出ています。
北部九州を中心にホームセンターを展開する株式会社グッデイでは、AIを活用して使い捨てカイロの需要予測を実施しています。全店舗の過去3年分の使い捨てカイロの販売実績と気象情報(気温など)をAIに学習させた需要予測の結果、1店舗あたりの平均誤差を1~2個まで抑えるという成果を出しています。
また、仕入れ先から花の状態を画像で送ってもらい、AIで自動的にランク付けする仕組みも実現しました。AIのおかげで、担当者が現地訪問をする手間を省き、また、園芸の専門知識を持たない社員でも仕入れ業務が可能になったといいます。
家電量販店チェーン最大手の株式会社ヤマダデンキでは、2019年12月から夜間の修理受付業務をAI音声自動応答システム「Terry」で自動化しています。これまでは、時間外で受付できなかった夜間の出張修理電話受付を「Terry」で代行することで、顧客のライフスタイルやニーズに合わせて受け付けられるようになったといいます。夜間受付のほか、回線混雑時の補助的な運用などにも活用を広げていく展望とのことです。
調剤薬局併設型ドラッグストアをチェーン展開するウエルシア薬局株式会社では、人手不足の中でカスタマーサービスを向上するため、AIを活用して店内カメラから不審な行動を感知する「AIガードマン」で防犯に取り組んでいるといいます。感知された不審な行動を取る来店客には、店舗スタッフが声がけを行うという流れとなっており、店舗スタッフが、ほかの来店客にも積極的に声をかけることでコミュニケーションが増え、来店客の疑問の解消にもつながっているとのことです。
現在のAI活用がさらに進んだ未来の小売業の姿を予測してみましょう。
店舗においては、AIを搭載したロボットによる接客が当たり前になるでしょう。ロボットは、接客だけでなく、品出しや在庫管理まで担えるようになるはずです。
また、ICチップ付きなどのポイントカード、AI搭載カメラや商品棚のセンサーの設置・連動や、ショッピングカートにAIを搭載したスマートカートによるレジレス店舗が一般的になるでしょう。
さらに、来店客の属性やグループの人数、行動、滞在時間などをAIがリアルタイムに分析し、売り場にスピーディに反映するといった販促も実現できるようになるかもしれません。
一方、本部や事務所では、より正確な需要予測に基づき過剰在庫を抱えずに済むとともに在庫不足もなくなり、無駄な廃棄や販売機会のロスなどが解消できるでしょう。さらにAIが進歩すれば、競争力強化や顧客満足度向上のための戦略立案といった、より高度な業務まで担ってくれるようになると考えられます。
この行き着く先は、店舗にスタッフがいなくなる無人店舗どころか、店舗が不要になる未来かもしれません。個人宅などに設置されたセンサーとAIにより、設定しておいた消耗品や食品などがなくなりそうだと感知したら自動で倉庫から商品が出荷される…という仕組みが実現するかもしれません。
小売業におけるAI活用事例と未来予測をご紹介いたしました。
現時点で小売業においてAI活用は部分的・限定的ですが、いずれは店舗全体がAIによって最適化されていく未来が現実のものとなるかもしれません。
アイネスでは、AIに関するご相談も承っております。AI活用についてお悩みの小売業の企業様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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