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2022/04/18

自治体DXとは?推進のポイントと行政の取り組み事例を紹介

自治体DXとは?推進のポイントと行政の取り組み事例を紹介

自治体DXとは、自治体が最新のデジタルテクノロジーを活用して住民に提供するサービスや業務フローなどを変革させることです。

産業界から高まりを見せている日本のDX(Digital Transformation/デジタルトランスフォーメーション)ですが、その波は行政や自治体へも及び始めています。「ガブテック(GovTech)」という言葉も聞かれるようになり、行政手続きのオンライン化などを担う「デジタル庁」が、2021年9月1日に創設されました。

本コラムでは、自治体DXについて、推進のポイントと行政の取り組み事例を紹介いたします。

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行政が推進する自治体DXとは?

自治体DXとは、自治体が最新のデジタルテクノロジーを活用して住民に提供するサービスや業務フローなどを変革させることです。

そもそもDXとは、企業などが最新のデジタルテクノロジーを活用して戦略やプロダクト、業務フローなどを変革させることをいいます。この主体が企業から自治体になったと考えるとわかりやすいです。

ただ、企業がDXを行う目的が競合企業に対する競争力を高めるため、つまり自社の利益のためであるのに対し、自治体DXでは変革を行うのは住民のためであるという点が大きく異なります。

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なぜDXが必要なのか

自治体におけるDXを推進する理由の根本には、少子高齢化による人口減少があげられます。
人口減少により地方では過疎化が進んでいます。これが一定の域を超えると、ゴミの収集や上下水道のメンテナンスといった社会インフラや公共交通サービスを提供するためのコストがかかり過ぎてしまい、最終的に提供できないレベルに至ります。

実際に、国土交通省は居住区域と生活サービス施設を集中させる「コンパクト・プラス・ネットワーク」を推進しています。平たくいえば、意図的にほどよく過密なまちづくりを行うことで、都市の機能を存続させるということです。
しかし、実現に当たっては、すべての住民に対して強制的に移動させることができないなどの課題もあります。

また、総務省によれば、2020年4月1日の地方公務員数を1994年と比較すると、約52万人減少しているといいます。この要因は必ずしも人口減少だけではありませんが、将来的な人口減少による人手不足が懸念されています。

そこで、最新のデジタルテクノロジーを活用することでこうした課題を解決し、住民一人ひとりにきちんと行政サービスを届けられるように変革しようというのが自治体DXです。
総務省が2020年12月に発表した「自治体DX推進計画概要」によれば、「自治体DX推進計画の意義・目的」の3つのうちの1つ、「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」から目指すべきデジタル社会のビジョンとして「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~」が示されています。

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自治体がDXを推進する際のポイント

自治体がDXを推進する際のポイントとしては、次の3点が挙げられます。

社会課題を出発点とした提供価値の創出

DXを推進するに当たり、それぞれの自治体が抱えるさまざまな課題を洗い出し、それらに対して自治体として提供できる価値は何かを検討することが重要です。
具体的には、業務の必要性を確認したり、手続きの簡素化をはかるなど、価値提供のために必要な要素を洗い出していきましょう。

スモールスタートによるクイックウィン

前項で、提供価値と必要な要素を明確にしたら、まずは、小さな規模からスタートすることをおすすめします。

実際に取り組みを行うことで、住民の反応や、新たな課題の抽出など、得られるものがたくさんあるはずです。
小さな成果でも初期の段階で成功実績を積み重ねるクイックウィンを重視し、手ごたえがあれば拡張する方向で進めることで、DXの実現につなげていきましょう。

利用データの蓄積と分析

DXを実施する中で、生成されたデータをしっかり蓄積していきましょう。この時、注意したい点は、利用者である住民や職員に極力負担をかけない方法で蓄積するということです。

蓄積したデータは、仮説を立てた上で分析に活用します。分析結果は、取り組みにフィードバックして改善を加え、より良い価値提供へとつなげていきましょう。

総務省が提唱する自治体が取り組むべき重点事項

総務省が「自治体DX推進計画概要」で提唱している、自治体が取り組むべき重点事項は次の6点です。

自治体の情報システムの標準化・共通化

従来、自治体の情報システム構築は各自治体に任されており、ベンダーもシステムもさまざまで仕様も標準化されていませんでした。
これを、2025年度中に基幹系17業務システムについて国の策定する標準仕様に準拠したシステムへ移行し、「Gov-Cloud(仮称)」を構築・活用することを目指して標準化・共通化しようというものです。

マイナンバーカードの普及促進

政府が、各種証明書の取得や電子申請を簡単に行えるようになるとして普及を進めているマイナンバーカード。キャッシュレス決済で最大5,000円分が上乗せされるマイナポイントなどの推進施策を進めているものの、2021年5月5日時点で交付率は30%と低調です。

政府はこれを2022年度末までに、ほとんどの住民がマイナンバーカードを保有していることを目指して、交付円滑化計画を策定し、申請を促進するとともに交付体制のさらなる充実をはかっています。

自治体の行政手続のオンライン化

政府は、今後マイナンバーカードを活用した電子申請が想定される手続きについて、2022年度末を目指してマイナポータルからのオンライン手続きの実現を目指しています。

これに関して、国と自治体とで連携を取るため、自治体との接続機能の開発などを進めています。

自治体のAI・RPAの利用推進

自治体の情報システムの標準化・共通化」や「自治体の行政手続のオンライン化」に伴い、各自治体で業務見直しなどを行い、総務省が作成する「AI・RPA導入ガイドブック」を参考にAIやRPAの導入・活用を推進するというものです。

テレワークの推進

新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、民間企業で一気に進んだテレワークですが、自治体の業務においてもテレワークを促進するために、「自治体の情報システムの標準化・共通化」や「自治体の行政手続のオンライン化」に伴って対象業務を拡大し、総務省は「テレワーク導入円滑化のためのセキュリティポリシーガイドライン」の改定や、テレワーク環境、テレワーク導入事例を提供しています。

セキュリティ対策の徹底

前項の「テレワーク導入円滑化のためのセキュリティポリシーガイドライン」の改定に伴って、各自治体においても適切にセキュリティポリシーの見直しを行い、情報セキュリティ対策は、さらなる強化が求められています。

DXを活用した自治体の取り組み事例

最後に、実際にDXに取り組んでいる自治体DXの事例をテクノロジー別に5つご紹介いたします。

AIチャットボット

AIチャットボットとは、文字情報や音声を介して人と対話することを目的に作られたプログラムであるチャットボットに、AIが搭載されたものです。AI(Artificial Intelligence)は「人工知能」と訳され、従来のコンピュータが行ってきたような単純計算などではなく、人間が行うような言語の理解や推論、学習、問題解決といった創造的・知的行動を実行できる技術を指します。

AIチャットボットは、AI非搭載のチャットボットでは対応できないような質問者の言葉使いの揺れにも対応でき、会話を重ねることでより回答の精度が上がるといったメリットがあります。

AIチャットボットの事例としてご紹介するのは、岐阜県および県内市町村の計40団体が共同利用する「AIスタッフ総合案内サービス」です。
住民からの子育て、引越し・住所変更の手続き、ごみの出し方、住民票や戸籍、各種書類の請求などさまざまな問い合わせに学習済みAIによるチャットが幅広く回答します。対象カテゴリは34分野、QAデータ数は1500件以上。今後も利用者のニーズをもとに、利用分野の拡大を行っていく予定です。

導入団体様でのデータを分析したところ、新型コロナウイルスの問合せでは、電話問合せができない深夜の時間帯にもチャットボットが利用されており、日中は仕事などでなかなか検索をしたり情報収集をできない住民が、夜間にも情報収集にご利用いただいていることがわかりました。

【関連サービス】AIスタッフ総合案内サービス

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電子申請

電子申請とは、従来、書類で行ってきた申請や届出といった行政手続きを、パソコンやタブレット、スマートフォンなどからインターネット経由で行う申請方法のことです。
住民にとっては、申請のためにわざわざ役所へ出向かなくても済むようになったり、開庁時間外の夜間などでも申請が行えたりと、利便性が向上します。

電子申請の事例としてご紹介するのは、埼玉県の「彩の国 電子申請サービス」です。同サービスはさかのぼること18年も前の2003年4月にスタートしています。当初は、セミナー参加申請や学習ルーム利用申請などの6つのサービスのみが対象でしたが、2021年8月現在では、埼玉県宛ての申請のほか、埼玉県警や各市町村宛ての申請など、併せて900件以上の手続きが電子申請で行えるように整備されています。

2021年4月からは、従来のようなID/パスワードのアカウントを作成するのではなく、メールアドレスを登録すればサービスが利用できるようになるなど、常に住民視点での改善が行われている様子がうかがえます。

地域通貨

地域通貨とは、一定の地域やコミュニティ内でのみ利用できる、法定通貨と同等の価値を持つ貨幣(※貨幣として発行されるもの)のことで、コミュニティ・マネーともよばれます。海外でも盛んに活用されており、代表的なものにスイスの「WIR(ヴィア)」などがあります。

地域通貨は、地域外へ持ち出されることがなく、金融機関へ預けられることもありません。このため、地域内での支払いに使われる可能性が高く、地域の経済活性化が期待できます。また、必ずしも一般的な購買だけでなく、ちょっとした助け合いの対価としても使われるため、地域コミュニティの活性化も見込めます。

日本でも2000年代前半に地域通貨ブームが起き、全国に100以上の地域通貨が存在します。地域通貨の事例としてご紹介するのは、埼玉県深谷市の発行するデジタル地域通貨「negi(ネギー)」です。negiは、少子高齢化による人口減から懸念される地域経済の衰退を食い止める手段の一つとして導入されました。1negiは1円相当として市内の約600店舗で、「chiica(チーカ)」というスマホアプリ経由、またはQRコード付きのカードで決済に利用できます。

RPA

RPAとは、Robotic Process Automationの頭文字を取ったもので、ロボットを業務に活用して自動化・効率化しようというものです。従来は人間がこなしていた定型業務などをRPA化することで、24時間365日、ミスなくスピーディに代行してくれます。

自治体でRPAを導入することで、人手不足の解消が期待でき、総務省も2018年から自治体へのRPA導入支援を予算化し、推進しています。

RPAの事例としてご紹介するのは、千葉県市川市のRPA導入による業務効率化です。多くの自治体では職員が膨大な業務を抱え、時間外勤務が常態化しがちですが、市川市でも同様の課題を抱えていました。児童手当年金などの情報照会業務を中心にRPA化を進め、年間の時間外勤務削減効果は約500時間にものぼると見込まれています。

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オープンデータ活用

福岡市が管理するWebサイト「自治体オープンデータ」の定義によれば、オープンデータとは、「機械判読に適したデータ形式で、二次利用が可能な利用ルールで公開されたデータ」であり「人手を多くかけずにデータの二次利用を可能とするもの」だといいます。

これを自治体におけるオープンデータ活用の文脈で考えると、行政や自治体が保有する公共データなどが、誰でも二次利用できるものとして公開されることだといえます。

オープンデータ活用の事例としてご紹介するのは、横浜市金沢区の子育てポータルサイト「金沢区子育て支援拠点とことこ(旧:かなざわ育なび.net)」です。同サイトには、区の中では管轄が異なるが、子育て中の親が知りたい情報(保育園の空き状況、公園の情報、予防接種の予定など)が集約されており、子どもの生年月日や居住地の郵便番号を入力すると、関連度の高い情報が上位に表示されるパーソナライズ機能が備わっています。

 

まとめ

少子高齢化が進み、人口減少が避けられないこれからの日本において、自治体のDXは不可欠なものとなるでしょう。

総務省の動向を注視しつつ、地域が抱える課題や住民とのコミュニケーションの取り方を第一に、必要なデジタルテクノロジーを見極めて、DXに取り組みましょう。

アイネスでは、これまでに培ってきた豊富な知識とコンサルティング力を組み合わせ、自治体DXの推進をサポートします。三菱総研グループとともにデジタル技術を活用して地域課題の解決に挑む『Region-Tech構想』の実現に向け、地方自治体に向けたソリューションの開発、提供を行っております。

詳しくは、「自治体DX」のページをご覧ください。

※ 本文に掲載されている会社名・団体名および製品名は各社または団体等の商標または登録商標です。

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